演習林のボスです。このお盆休みを利用して八ヶ岳の麦草峠から丸山、高見石、白駒の池とハイキングをしました。亜高山帯の森林植生は大学の卒業研究で富士山を調査していましたので興味ある対象です。分布している樹木は、シラビソ、オオシラビソ、トウヒ、コメツガなどの針葉樹に混ざってダケカンバ、ナナカマド、ミネカエデなどの広葉樹が所々に見られました。低木はハクサンシャクナゲやオオカメノキなどです。縞枯れで有名な縞枯山はすぐ近くです。今回のハイキンングの途中でも小さな縞枯れを見ることができました。枯れた上木の下にはびっしりとシラビソやオオシラビソの稚樹が分布しており、成長とともに個体密度が低下していく様子がはっきりととらえられました。シラビソとオオシラビソの区別はそれほど難しくありませんが、発芽して2、3年の小さな実生は全く区別できませんでした。以前読んだ論文にこのような小さな実生まで区別してあったと記憶していますが、どのような違いがあったのでしょうか。下の写真は成木の枝ですがどちらがオオシラビソでしょうか。
コメツガやトウヒの分布はシラビソ・オオシラビソの分布とは異なっていました。ざっと見た程度ですのではっきりとはわかりませんが、後者の2種は完全に混交していましたが、コメツガは純林を形成していました。やや標高の低いところに分布する傾向がありました。トウヒもその傾向がありましたが、まとまった林を形成しないで数本のパッチを形成していました。
我が演習林のある佐渡島には過去に亜高山帯針葉樹が分布していたことが花粉分析で知られていますが、現在は全く分布していません。しかし、亜高山帯の広葉樹はナナカマド、オオカメノキ、ハクサンシャクナゲとかなり高い密度で、しかも低標高まで分布しています。針葉樹は氷期、間氷期の繰り返しで山頂から追い出されて絶滅したのに、なぜこれらの広葉樹は佐渡の中でかなり高い優先度で分布できているのでしょうか。不思議な現象です。諏訪の七不思議の一つが縞枯れですが、佐渡の演習林の七不思議の一つがこの現象です。