2020年10月28日水曜日

2020/10/16-18生態系管理実習

野外作業していても、暑くも寒くもない、気持ちの良い季節になりました。10月は実習日和ですね。さて、今回は10月16日から18日まで国仲平野で行われた生態系管理実習の報告です。フィールド人材プログラムと流域環境プログラムの学生さんが参加しました。

生態系管理実習は以下の流れで行います。
①里山の現状をデータで把握する
②地域、ステークホルダーのニーズの把握
③自然再生維持管理の方向性を設定
④施業

佐渡の里地は畔や休耕地などの管理は比較的行われていますが、難所となっているのがその周辺の林です。どのように木を残し、切るのか、など、計画を立ててさらに伐採を行うには技術が必要です。この実習では、その一連の流れを学びます。

これから生態系管理のための施業を行う林です。ハンノキなどが密生しています。
まずはデータをとることから。毎木調査(種を調べ、樹高や胸高直径を測ります)
林縁の水路そばはアケボノソウがたくさん・・・。演習林では山の稜線の水が染み出る谷に多くありますが、海抜0近い平地にもあるんですね。
帰ったら、分からなかった樹種の同定やデータ整理を行います。そのデータを見て、どのような樹種、大きさの木を残すか決定します。
翌日はいよいよ施業。とにかく力仕事です。
みるみる林が明るくなります。
最後に記念撮影!トキがやってくるような林に生まれ変わるでしょうか?
みなさん、お疲れ様でした。

2020年10月19日月曜日

2020/10/3, 4 一般対象 公開林間実習(日帰り×2日間)

すっかり秋の気配となり肌寒くなってきましたが、10月に入っても実習はまだまだ続きます。


10月1週目の土日に行われたのは、一般市民対象の「公開林間実習」。

新潟大学の演習林は、通常は調査・研究・教育目的以外で一般の方は入れない区域となっています。

そのため、年に一度の公開林間実習は保護された自然度の高い森林や植物を間近に観察することができる貴重な機会です。

今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止を考慮し、例年の夏休みから10月に開催時期を変更し、また佐渡島民限定の日帰り形式で実施しました。


規模を縮小したにも関わらず、たくさんの方にお申し込みをいただきありがとうございました!!

16名×2回の募集でも定員を超過してしまい一度は抽選を行いましたが、その後にキャンセルが出たため、希望者の方にはご参加いただくことができました。


10/3(土)と4(日)のいずれも内容は同じですので、写真を混ぜながらご紹介します。

(野外では感染リスクが低いこと、また動き回り息苦しくなるため、一部参加者がマスクを外している場合もありますがご理解ください)


まずはじめは、演習林に入山するゲートの周辺で「地表徘徊性昆虫の観察」を行います。

前日に演習林スタッフ+学生で、ピットフォールトラップと呼ばれる昆虫を捕まえるための罠をしかけました。

罠といっても、市販のプラスチックカップを地中に埋め込んで”落とし穴”を作るという簡単なものです。

この落とし穴に落ちた、翅が退化して飛ぶ能力を持たない昆虫やその他の小動物などを観察します。


さて、今回の調査で捕らえられたのは…ゴミムシの仲間とサワガニ!

サワガニがこのトラップで捕まるのを初めて見ました(笑)

実習前後は夜間に雨が降り湿った気温の低い日が多かったためか、期待していたサドマイマイカブリやセンチコガネなどの大きめの昆虫類は捕獲できませんでした。

TAとして参加してくれた博士課程学生のFくんからは、これらの土壌動物類が落葉を物理的に分解することで物質循環機構が維持されること、飛ぶことができない昆虫類はその場の森林の特徴を示す重要な指標となることなどの説明がありました。

普段あまり触れることのない知識に、参加者の皆さんも熱心に聞き入っていました。

ピンク色のテープを目印にトラップを探します

回収した生き物の説明をするFくん

バットごとに分類していきます

興味津々で覗き込む姿も

一行は、この実習のメインとなる大王杉周辺でのトレッキングに向かいました。

1時間程度の散策ですが、勾配も大きく倒木や根などの障害物も多いため、山歩きに適した服装と靴は必須です!!

(今回参加された皆さんは、準備もばっちりでした)

佐渡演習林の実習では定番ともいえるこのコースですが、今年は演習林見学をメインとした他大学や新潟大学低学年向けの実習が軒並み中止となったため、意外にも今年度初の散策となりました。

不思議な造形の天然スギに囲まれたトレッキングコースは、
佐渡演習林でしか体験できません!

人が入れるほど大きなうろが開いている、たこ杉

大王杉の迫力はいつ見ても圧巻ですね

S先生も体を張って、樹木の枝の強さを体現しています


お昼ご飯の前には少し時間に余裕ができたので、関集落の金剛杉を見学することになりました。

スギの周りに設置された木道は、見学者が根を傷つけてしまわないように守る役割を果たしています。

周辺の林道沿いには、秋のキノコも多く出始めていました。

金剛杉は大人気でなかなか近づけず…

アカヤマタケ(左)...かわいい見た目ですが、傷つけると黒変してしまいます
ワタカラカサタケ(右)...色合いと柄のもふもふ具合に一目ぼれ間違いなし!

午後は先ほどまでの鬱蒼とした森林から雰囲気ががらりと変わり、見通しの良い風衝地の見学です。

この場所は海からの風が集まりながら谷から上がってくるという特殊な地形のため、あまりの風の強さに樹木が大きく育つことができません。

今年度はこの谷底までロープで下りながら植生調査を行うという卒論の学生もいますが、改めて底をのぞいて見ても恐ろしいほどの高さ(深さ)です。

しかしそれだけではなく、高木が育たない草原に近い状態で湿潤な環境が保たれるため、ダイモンジソウやモウセンゴケ、ウメバチソウ、チョウジギクなどの林内ではあまり観察されない草本類を見ることができます。

今年は夏の終わりが遅かったこともあり、この時期でも開花している種が多くてラッキーでした!

車を降りると、目の前には深い谷!

アオネバとも呼ばれる緑色凝灰岩を観察

ダイモンジソウはちょうど見ごろ!

チョウジギクは少し終わりかけ

ススキの穂も広がり、秋の深まりを感じます


最後に、千手杉の周辺を見学して演習林見学も締めくくりとなります。

千手観音の手のように広がる枝振りと、その下で静かに広がる水たまりは、佐渡演習林の尾根ならではの光景です。

来年もまた、ここで多くのサンショウウオやカエル達が生まれ育っていくのでしょう。

この時期は、さすがに両生類の姿は見られません

ご参加いただいた皆さん、お疲れさまでした!

1日目の班は最後に千手杉周辺のトレッキング、2日目の班はその代りに連結杉の見学、と、見学ルートの内容は少し異なったようですが、お楽しみいただけましたでしょうか。

1日目は昼頃から小雨がぱらつきましたが、本降りはすべての見学が終わった後の移動中で済んでよかったです。


今回の実習で紹介した場所は、残念ながら一般の方が自由に入山して見学することはできません。

もし興味を持たれた方は、来年度の公開林間実習の募集までお待ちいただくか、佐渡のエコツアーガイドにお申し込みいただくことで入山できます。

また教育や研究活動の目的であれば、新潟大学演習林にお問い合わせ下さい。

来年度こそは、また日本各地から佐渡演習林にお越しいただけることを願っております。


2020年10月7日水曜日

2020/9/28-10/1 樹木学実習

 9月最終週は、S先生による「樹木学実習」。

佐渡島内の多様な森林環境で樹木の葉の標本を採取し、100以上の樹種を見分けられるようになることが目標です。


新型コロナの影響で多くの科目の開講スケジュールがずれた影響もあり、今年度は受講生4名の精鋭による実習となりました。

採集した標本にはタグがつけられています

丁寧に新聞紙に挟んで

押し葉標本にします(きのこ図鑑は重し用)

たった4人なのに机の上はいっぱい…!


実習が進むにつれ、採集した標本が机の上に山のように積み重なっていきます。

この短い実習期間のうちに100以上の樹種の名前と特徴を覚えるというのですから、学生さんにはなかなか厳しい内容のようです。

私自身も植物の名前を覚え始めた当初はまったく区別がつかずに苦労しましたが、今では知らない樹種があると逆に目につくようになりました。

この実習で身に着けた知識は、今後いろいろな場面で必ず役に立つと思いますよ!


S先生は今年で定年退官されるため、格別に気合が入っていたかもしれませんね。

参加された皆さん、お疲れさまでした!!



2020年10月6日火曜日

2020/9/14-20 フィールドワーカーのためのリスクマネジメント実習

 9月に連続する大型実習のなかでも、ウェイトが大きい実習がこの「フィールドワーカーのためのリスクマネジメント実習」。

コロナの影響で例年よりも1日スケジュールが短くなったとはいえ、3泊4日×2班連続での実施はなかなか強行日程です。


内容もオフロードでの自動車走行や事故時の対処法、ロープワーク、木登り、崖下り、地図読みルート探索による登山、野営法など、野外調査で必要な知識と技術が盛りだくさん。

A班はスケジュール通りに実施できましたが、B班はあいにくの悪天候で一部のスケジュールと内容を変更して実施しました。

便宜上、以下では当初のスケジュールに沿いながらA/B両班の実習中の様子をご紹介していきます。


1日目:救急救命講習、フィールド調査における安全管理の講義など

初日は例年と同様に、佐渡市消防本部に立ち寄って救急救命講習を受講してから演習林施設に到着となりました。

夕方いつもよりは遅めの到着となりましたが、すっかり慣れた様子で宿舎に入っていく学生の姿も。

今回は先日の育林実習や野生動植物生態学実習に参加していた学生も多く、こちらも対応しやすかったですね。


2日目:自動車の事故対応、ロープワーク、野外での懸垂下降実技など

(※B班は大雨のため、急きょ臨時の「植物分類実習」も実施)

翌日の午前は、まず自動車の構造や事故時の対応に関する実技の訓練です。

公用車や教職員所有の4台の自動車を比較しながら、駆動輪やエンジン位置の違い、タイヤ交換、バッテリーが動かない場合の対応などを学びました。

オフロード用のタイヤは重く、交換も大変です

B班は大雨のため車庫内での実習です

午後からはロープワーク。

まずは室内でロープの基本的な結び方を教わります。

本結び、八の字結び、もやい結び…様々な結び方を覚え、用途に合わせて使い分けることが目的です。

ここで結び方を間違えたり、誤った用途に使用してしまうと事故の元!!

得意な人、苦手な人がいましたが、皆さん頑張ってロープを結び続けていました。

先生の見本を見ながらやっても、同じように結べないのはなぜ…?

そして野外に出て、実際にロープを使用した木登りや壁登り下り、懸垂下降の実技も行います。

10m以上の高い壁から降りる様子は、見ているだけでも冷や冷やしてしまいます。

高所恐怖症の私にはとても無理そうですが、意外と楽しそうな学生さんが多いのですよね…。

実際に卒業研究でロープ下降をしている4年生Kくんが手本を見せます

H先生は樹上から手を放しながら説明!

こちらは高さ10m超の人口のり面

ロープをゆるめながら、少しずつ下りていきます

下りはじめ位置はほぼ垂直の傾斜!

…実は、B班の2日目は大雨。

そのため↑で紹介した野外実技の一部は、翌3日目の午後に実施した様子も混ざっています。

B班は代わりに、急遽近くの石名集落の周辺で代表的な樹種の葉を採集して「ミニ植物分類実習」のような内容を実施しました。

写真も動画も撮る余裕がないほどの大雨でした!


宿舎に戻ってから、夜も遅くまで講義が続きます。

翌日の登山に向けて、地図読みや高度確認、植生調査の方法を学びました。

地図上の地形を確認しながらルートを書き込みます


3日目:登山(地図読みによるルート探索、植生調査)、野営法など

A班は内海府~演習林~外海府のルートを約7時間、B班は外海府~演習林のルートを約3時間(登りのみ)で登山しました。

A班は気持ちの良い快晴で、演習林尾根からは外海府の海まで見えました

分かれ道で迷い、地図を確認中…

B班は前日に樹種の勉強もしたので、植生調査はばっちり!

宿舎に戻り、希望者は野営法を学ぶため、事務室の脇にテントを張って一晩を過ごしました。

例年は最終日に山の上でキャンプをするのですが、今年は新型コロナの影響で「複数人のテント泊」や「共同調理」はできない状況ですので少し寂しいですね。

逆に3~4名用のテントを一人で貸し切り利用できる状態だったため、広々使えたのはラッキー!?

道路わきに突如現れたテントの集団

皆さん、お疲れさまでした!

今季では一番長く、内容的にも緊張感が続くなかなかハードな実習だったと思います。

これから本格的にフィールド調査が始まりますが、この実習で身に着けた技術と知識を活かして安全第一で取り組んでくださいね!!



2020年10月2日金曜日

【第2報】佐渡島漂着イノシシ掘り起こしワークショップ10/31-11/1

佐渡島の海岸に漂着したイノシシを掘り起こし、観察するワークショップを開催します!海を越えてやってきたイノシシのホネはさまざまな物語を持っています。ホネを堀り、ホネを観察することで、その生きざまを知るだけでなく、佐渡島へ漂着する生物の謎を解き明かすことが出来るかもしれません。2日目はホネの魅力を語りつくす講演もあります。チラシはこちら

講師は西澤真樹子さん。大坂市立自然史博物館友の会評議員、貝塚市立自然遊学館など、フリーランスとして博物館のコレクション整理や標本制作にかかわっています。2003年大坂市立自然史博物館を拠点に標本制作チーム「なにわホネホネ団」を結成し、ホネホネ団の団長としても有名です。

講師:大阪自然史センター西澤真樹子・新潟大学教員及び学生

協力:永井エヌ・エス知覚科学振興財団・佐渡市

参加希望の方は下記へ事前メールでの申し込みをお願いします(1023日締切)。参加希望日と人数をご連絡ください。予告のため、スケジュールの多少の変更はあるかもしれません。ご連絡いただいた方に改めて詳細を連絡します。11月1日の講演に参加希望の方は佐渡市のチラシからの申込も出来ます。佐渡市民環境連続講座の一つですが、111日のみの参加は無料です。なお、コロナウイルス対策のため、2週間前までの体調の記録や感染者の多い地域への外出自粛をお願いしています。

1031日(土)定員12名程度(大学生までを優先。佐渡在住者優先。)

※参加費: 500円(保険代)※当日徴収します

※天候等により掘り起こしが実施できない場合はイタチとテンの解剖ワークショップになります(小田94-2佐渡ステーションで実施)

900 弁天シーサイド脇の駐車場(佐渡市椿尾967)※送迎が必要な場合はご連絡ください

930-1200頃 素浜でイノシシ掘り起こし

各自お昼休憩後、各自移動

1400 トキ交流会館(大ホール)に移動、洗浄、パズル 

※トキ交流会館が使えない場合は佐渡ステーション(小田94-2)(車で1時間半)

1630ごろ 記念撮影して終了


111() 定員50名(市民環境大学連携講座)

※無料

1000-12:00 あいぽーと佐渡 多目的ホール

    ホネの魅力:大阪自然史センター 西澤真樹子

② 佐渡の生物はどこから来たのか? 阿部晴恵

 

お問い合わせ

新潟大学佐渡自然共生科学センター 阿部 

952-2206佐渡市小田94-2 

E-mailsadoken2011@gmail.com

果たして、掘り起こす前に見つかるのか!?