2020年6月29日月曜日

シマヘビの食性調査・行動実験

佐渡研究室学部生4年の者です。

今回は6月調査の様子を紹介したいと思います。

私の研究は水田地帯などでよく見られるシマヘビ(Elaphe quadrivirgata)の佐渡島における食性を調べること、さらに現在佐渡のみで確認されているハゼ食(魚食)のシマヘビには頭部形態などは魚食が確認されていない個体と違いがあるのか?、一方で魚食は確認されていない個体も飼育下では魚食行うのか?などをテーマに、研究を進めています。 

コロナ禍によって研究のスタートが大きく遅れてしまいましたが、今回の調査では多くのシマヘビを捕獲・測定することができました。

河川を上りながらの計測、いろいろな生き物も観察できました。

上図は素手で採れてしまった大きなイワナです。水流が少なかったので動けなくなっていたようですね。

 下図はオオイタドリの上で休んでいたモリアオガエルです。なかなか立派な、かわいらしい表情をしていました。

そしてめずらしいとされるカラスヘビ(シマヘビの黒化型)2匹も捕獲されました

共同で調査を行っている先輩にもこんなこと(一度の調査で2匹もカラスヘビが採れる)滅多にないとのお話でしたとても興奮しました

捕獲したカラスヘビ。同じシマヘビには見えませんね。

初めての計測でなかなかうまくいかず苦戦しました。画像はカラスヘビの胃内容物確認中のものです。

そしてなんとそのうちの1匹は目の前でアユの死骸の捕食を行っていました!!!初記録のとても貴重な瞬間を見ることができ、先輩も私も興奮をしばらく冷ますことができませんでした

また他の河川の調査でもさらにハゼ食(シマヨシノボリRhinogobius nagoyae)の個体、なんとアユカケ(Rheopresbe kazika)を捕食していた個体を捕獲することができました!!!アユカケの捕食記録は初めてのことで、こちらも大変うれしかったです。

そして同時並行で進めているのが飼育下でのハゼ食実験です。こちらはハゼ類の捕食方法に対応して頭部形態が変化しているのではないかと思い始めたものです。先日のブログで上がっていたシマウキゴリ(Gymnogobius opperiens)とスミウキゴリ(Gymnogobius petschiliensis)はこちらの実験で利用させていただくため捕獲しました。

どのようにハゼ類を捕食しているのか、うまく映像として残せるといいです・・・。

なんだかいろいろ興味深いことが盛りだくさんとなった6月調査ですが、まだまだ調査は始まったばかりなのでこれからも報告させていただこうと思います。

2020年6月27日土曜日

下甑島(鹿児島県)弾丸調査

梅雨に入って、毎日天気予報を眺めながら、よし!っと思い立って鹿児島県の下甑島に行ってきました。島なので、予定を立てて行ってみたところ波や雨風で調査中断となるよりは、天気のよさそうな時を狙っていく、というのも計画のうちです。
 下甑島、あまり聞いたことがないかもしれませんが、原作Dr.コトーのモデルとなった島のようです。今年に入って、どうしても下甑島が呼ぶので、行ってきました。
銀の龍の背に乗って、到着
(ドラマのほうの舞台は与那国島でした…)

早速林内へ。アサギマダラ!
佐渡島にも来ています
ウスコモンアサギマダラ、リュウキュウアサギマダラ、タイワンアサギマダラなど、色々いるらしいのですが、おそらく佐渡でもおなじみのアサギマダラ。結構飛んでいました。
おそらくミヤマヨメナ

コシキジマシライトソウ
固有種です!
群生しています

ニシノヤマタイミンガサ
花も咲いていました。甑島が南限です
実は今回の調査、南限のホタルブクロや、ツリガネニンジン属のサイヨウシャジン、そしてツバキ属のサザンカがお目当てでした。
ムサシアブミ
なんか南方系という感じの植物ですね
テンナンショウ属です

ムサシアブミの果実

ユウコクラン
後ろのコシキジマシライトソウに気を取られますが
目の前に地味で優美なランがいました
甑島は、植物の北限、南限のものも多く、佐渡みたいですね(笑)。固有種もちらほら。色々紹介したいですが、きりがなさそうなので、今回はこの辺で…
次回は北海道、奥尻島が呼んでいる気がするので、弾丸調査を行えればと画策しています!

2020年6月20日土曜日

シイタケほだ木に生えたキノコ

佐渡演習林では、シイタケの原木栽培も行っています。

毎年、春と秋には多くのシイタケが発生し、それを職員さん達が丁寧に摘み取って乾燥させて売っています。
肉厚でとてもおいしいですよ。

春にはシイタケがもりもり生えます

実は、シイタケ菌を植え付ける原木(ほだ木)には、シイタケ以外のキノコもたくさん発生します。
森の中で自然栽培しているので、他の菌も入ってきてしまうのですね。
そのうち、「シイタケほだ木に発生する菌類の多様性」なんて調べてみたい…と思いつつ。

今回はその一つ、オオシトネタケ(Gyromitra parma)をご紹介します。
チャワンタケの仲間で、ほだ木の切断面に多く出ているようでした。

これはチャワンが反り返ったような状態ですね

一見キクラゲの仲間のようにも見えますが、毒キノコらしいので絶対に食べないでくださいね!
5月末、ほだ木の切断面にたくさん発生していました。

近縁種のフクロシトネタケとは肉眼でほとんど区別がつかず、顕微鏡で胞子の観察を行う必要があるとのこと。
ちょうど先日ブログで研究状況を報告してくれた学生さん用に顕微鏡カメラシステムを整備していたので、試してみることにしました。
(今までは接眼レンズ越しに撮影するしかなかったのです)

その結果…

子嚢胞子の表面には、網目模様がくっきり


無事に撮影成功!
サイズも測れるようになりましたよ。

これはかなり美しい部類の胞子ですね。
偶然選んだ材料でしたが、観察が楽しい被写体となってくれました。
表面の網目模様と、両端に飛び出た複数のとげが同定ポイントのようです。

こちらは子嚢の中に入ったままの胞子と側糸

これからますます顕微鏡観察が楽しくなりそうですね!


2020年6月19日金曜日

基礎農林2020演習林実習の初夏ショートver.

基礎農林2020演習林実習のおまけとして、初夏ショートver.をアップしました!早春の1時間程度の実習編と逆コースで回っている10分の映像です。

2020年6月18日木曜日

ホタルブクロの中は?

先日のホタルブクロネタの続きです。わかりやすく写真を撮ってみました。
左がヤマホタルブクロ(ガクの間の付属片なし)
右がホタルブクロ(写真で見ると付属片に毛がありますね)
 続いて、昆虫の気持ちになって、潜ってみましょう。白花でも、中には皆さんを誘うネクターガイドがついていますよ。
奥に行くほど色が濃いですね。誘われます!

花弁の内側に毛があって、
これを使えば登れそう!
雌期の花ですね。
頑張って奥まで行けるのは
マルハナバチや小さいアリなどだけです。
ホタルブクロは花粉媒介者を選びます。
 もちろん、ほとんどガイドがない白花もあります。佐渡島は白花が多いですが、ガイドがあまりなくてもトラマルハナバチが忠実に訪花します。
白花。ネクターガイドも薄いです。
こちらは雄期の花。
 こちらは花色のあるホタルブクロ。意外と、ガイドが薄いですね。
ピンクのホタルブクロの中
昆虫を誘引するために花は様々な戦略を持っていますね!ホタルブクロの国際共同研究が始まり、気分はホタルブクロに誘因される昆虫と一緒です(笑)

2020年6月17日水曜日

最近のフィールドワーク

ようやく佐渡島での学生の研究や、教員が島を出て調査が出来るようになりました。落ち着いて写真を撮れなくなってきたので、ブログのup数が減っていますが、より活動的に調査をしていると思っていただければ幸いです。その中での雑多なものをアップします。

大佐渡の海岸では海蝕洞や旧道の跡などがたくさんあり、洞窟性のコウモリが見られます。
キクガシラコウモリのコロニー
山ではケブカツルカコソウにホウジャク(スズメガの仲間)が来ています。可愛すぎます。
口吻を刺してホバリングしながら蜜を吸います
 海が荒れた日の海岸には海藻が打ちあがります。
メカブ付きワカメ
アラメ
 ホタルブクロも咲き始めました。佐渡では、基本的にヤマホタルブクロが多く、里地近くや山の上の放牧地の近くなどはホタルブクロがあります。ほぼ白花です。ヤマホタルブクロはガクの湾入部に付属体がなく膨らみがあります。ホタルブクロの変種ですが、変種名が hondoensis(本州の)です。Campanulra  punctata (ホタルブクロ)は日本や朝鮮半島、中国にありますが、Campanulra  punctata hondoensis(ヤマホタルブクロ)は、日本の固有変種になります。
佐渡のヤマホタルブクロ
下の写真本州のホタルブクロ。紫花です。花の中を覗いてみると、雄性先熟(開花時の初めは、雄しべが成熟して花粉を出し、そのあと雌しべが成熟する)なので、咲きたての時はめしべの先っぽは開いていません。
白花でも、花の内側にはネクターガイドと呼ばれる点々があり、花蜜のある花筒の奥にマルハナバチを誘います。
本州のヤマホタルブクロ
こちらは久しぶりに島を出て調査をしてきた際の写真です。ユキツバキの葉の内生菌をしらべるために葉の採取をしています。
ユキツバキのリティズマ菌などを
新葉、3年葉、落葉で比較
こちらはシマヘビ調査用に採取したハゼ。
手前はシマウキゴリ、奥がスミウキゴリ
なぜ、ヘビの調査でハゼを採取しているかは、学生さんから調査報告があるかと思います!

2020年6月15日月曜日

第一回佐渡菌類相調査

こんにちは!佐渡研4年生のNです!
緊急事態宣言が解除され、ようやく研究が始められました!

僕の研究は佐渡島の登山道を歩き、きのこを片っ端から取ってきて土壌水分や植生との関わりを調べるというものなんですが、いやー大変でした!

調査地の下見を行う予定がコロナでキャンセルとなり、ぶっつけ本番の調査となったのですが進まない進まない。慣れない作業ということもあり、初日は行程の20分の1ほどしか進まなかったんじゃないでしょうか。

夜は演習林のセンターに持ち帰ったきのこの同定作業で寝れません。

アラゲコベニチャワンタケでしょうか。かわいらしいですね。
ほかのキノコもこれぐらいわかりやすければいいんですけど・・・笑
初日の目玉キノコ?アセタケ属sp
ハイチャトマヤタケかと思いましたが、良く調べてみるとそうとも言えない模様。
上のキノコの胞子。こんなに特徴的なのに種まで落とせないのか・・・。

調査2日目からは環境データの収集頻度に修正を加え、全行程の半分ほど進めることができましたが、その分多くのキノコを採ってきたため同定作業が地獄のよう・・・!
追加で1日やって合計3日間でようやく全行程を終えました。予定では1日で終わる行程だったのですが、思ったよりたくさんキノコに出会えてうれしい悲鳴でしたね。


ミズベノナガエヒメチャワンタケ。同期のHくんが見つけてくれました。
沢中の落枝から生えるおもしろいやつです。
不明種。こんなに特徴的な見た目なのに分かりませんでした。
このように科レベルすらわからない種も多数あって悔しいです。僕にもっと力があれば・・・!
粘菌だそうです。1mmぐらい。かわいいですね~
ボロボロですが、バケモノみたいなナラタケもいました!
オフシーズンでこれだけ大変となると、本シーズンはどうなっちゃうのかと今から震えが止まりません!頑張るぞー!
この場を借りて調査を手伝ってくれた同期のHくん、Mくんに謝辞を。ありがとう!

おまけ:コシカケ系の標本をとるために朽ち木ごと採取して乾燥機にぶちこんだら、中からクワガタがでてきました。寝てただけなのにごめんよ・・・。