2020年10月19日月曜日

2020/10/3, 4 一般対象 公開林間実習(日帰り×2日間)

すっかり秋の気配となり肌寒くなってきましたが、10月に入っても実習はまだまだ続きます。


10月1週目の土日に行われたのは、一般市民対象の「公開林間実習」。

新潟大学の演習林は、通常は調査・研究・教育目的以外で一般の方は入れない区域となっています。

そのため、年に一度の公開林間実習は保護された自然度の高い森林や植物を間近に観察することができる貴重な機会です。

今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止を考慮し、例年の夏休みから10月に開催時期を変更し、また佐渡島民限定の日帰り形式で実施しました。


規模を縮小したにも関わらず、たくさんの方にお申し込みをいただきありがとうございました!!

16名×2回の募集でも定員を超過してしまい一度は抽選を行いましたが、その後にキャンセルが出たため、希望者の方にはご参加いただくことができました。


10/3(土)と4(日)のいずれも内容は同じですので、写真を混ぜながらご紹介します。

(野外では感染リスクが低いこと、また動き回り息苦しくなるため、一部参加者がマスクを外している場合もありますがご理解ください)


まずはじめは、演習林に入山するゲートの周辺で「地表徘徊性昆虫の観察」を行います。

前日に演習林スタッフ+学生で、ピットフォールトラップと呼ばれる昆虫を捕まえるための罠をしかけました。

罠といっても、市販のプラスチックカップを地中に埋め込んで”落とし穴”を作るという簡単なものです。

この落とし穴に落ちた、翅が退化して飛ぶ能力を持たない昆虫やその他の小動物などを観察します。


さて、今回の調査で捕らえられたのは…ゴミムシの仲間とサワガニ!

サワガニがこのトラップで捕まるのを初めて見ました(笑)

実習前後は夜間に雨が降り湿った気温の低い日が多かったためか、期待していたサドマイマイカブリやセンチコガネなどの大きめの昆虫類は捕獲できませんでした。

TAとして参加してくれた博士課程学生のFくんからは、これらの土壌動物類が落葉を物理的に分解することで物質循環機構が維持されること、飛ぶことができない昆虫類はその場の森林の特徴を示す重要な指標となることなどの説明がありました。

普段あまり触れることのない知識に、参加者の皆さんも熱心に聞き入っていました。

ピンク色のテープを目印にトラップを探します

回収した生き物の説明をするFくん

バットごとに分類していきます

興味津々で覗き込む姿も

一行は、この実習のメインとなる大王杉周辺でのトレッキングに向かいました。

1時間程度の散策ですが、勾配も大きく倒木や根などの障害物も多いため、山歩きに適した服装と靴は必須です!!

(今回参加された皆さんは、準備もばっちりでした)

佐渡演習林の実習では定番ともいえるこのコースですが、今年は演習林見学をメインとした他大学や新潟大学低学年向けの実習が軒並み中止となったため、意外にも今年度初の散策となりました。

不思議な造形の天然スギに囲まれたトレッキングコースは、
佐渡演習林でしか体験できません!

人が入れるほど大きなうろが開いている、たこ杉

大王杉の迫力はいつ見ても圧巻ですね

S先生も体を張って、樹木の枝の強さを体現しています


お昼ご飯の前には少し時間に余裕ができたので、関集落の金剛杉を見学することになりました。

スギの周りに設置された木道は、見学者が根を傷つけてしまわないように守る役割を果たしています。

周辺の林道沿いには、秋のキノコも多く出始めていました。

金剛杉は大人気でなかなか近づけず…

アカヤマタケ(左)...かわいい見た目ですが、傷つけると黒変してしまいます
ワタカラカサタケ(右)...色合いと柄のもふもふ具合に一目ぼれ間違いなし!

午後は先ほどまでの鬱蒼とした森林から雰囲気ががらりと変わり、見通しの良い風衝地の見学です。

この場所は海からの風が集まりながら谷から上がってくるという特殊な地形のため、あまりの風の強さに樹木が大きく育つことができません。

今年度はこの谷底までロープで下りながら植生調査を行うという卒論の学生もいますが、改めて底をのぞいて見ても恐ろしいほどの高さ(深さ)です。

しかしそれだけではなく、高木が育たない草原に近い状態で湿潤な環境が保たれるため、ダイモンジソウやモウセンゴケ、ウメバチソウ、チョウジギクなどの林内ではあまり観察されない草本類を見ることができます。

今年は夏の終わりが遅かったこともあり、この時期でも開花している種が多くてラッキーでした!

車を降りると、目の前には深い谷!

アオネバとも呼ばれる緑色凝灰岩を観察

ダイモンジソウはちょうど見ごろ!

チョウジギクは少し終わりかけ

ススキの穂も広がり、秋の深まりを感じます


最後に、千手杉の周辺を見学して演習林見学も締めくくりとなります。

千手観音の手のように広がる枝振りと、その下で静かに広がる水たまりは、佐渡演習林の尾根ならではの光景です。

来年もまた、ここで多くのサンショウウオやカエル達が生まれ育っていくのでしょう。

この時期は、さすがに両生類の姿は見られません

ご参加いただいた皆さん、お疲れさまでした!

1日目の班は最後に千手杉周辺のトレッキング、2日目の班はその代りに連結杉の見学、と、見学ルートの内容は少し異なったようですが、お楽しみいただけましたでしょうか。

1日目は昼頃から小雨がぱらつきましたが、本降りはすべての見学が終わった後の移動中で済んでよかったです。


今回の実習で紹介した場所は、残念ながら一般の方が自由に入山して見学することはできません。

もし興味を持たれた方は、来年度の公開林間実習の募集までお待ちいただくか、佐渡のエコツアーガイドにお申し込みいただくことで入山できます。

また教育や研究活動の目的であれば、新潟大学演習林にお問い合わせ下さい。

来年度こそは、また日本各地から佐渡演習林にお越しいただけることを願っております。


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