2022年9月30日金曜日

野生動植物生態学実習(8/11-13)

佐渡研究室修士1年のFです。

81015日にかけて新潟大学農学部の野生動植物生態学実習が実施されました。

実習は一昨年度から同様、新型コロナウイルス感染対策のため開催地を演習林から五十嵐キャンパスに変更して行いました。私はTA(ティーチングアシスタント)として本実習に参加しました。

実習のコンセプトは「木を丸ごと1本切り倒して、その全貌を丸裸にしよう(意訳)」というものです。3日間かけて木を伐採、根っこも掘り起こし、様々な項目を測定していきます。

伐採の対象となる樹種はニセアカシア(ハリエンジュ)です。北アメリカ原産の外来種で、瘦せた土地でも生育できることから、日本各地に広く分布しています。木本の生物多様性を低下させる特徴をもっており、侵略的外来種ワースト100に選定されています。大学の圃場内にも若いニセアカシアが多く生育していました。そんなやっかいものは2年前から本実習の伐採の対象となってきました。ちょうど2年前は私が実習生として参加した年でもありました。当時見た景色から比べると、ニセアカシアの本数が減ってきたような、、、気もします。ある意味実習の成果と言えますね。

1日目:サンプル木の伐採、根茎の掘り起こし、葉むしり、樹木の形質(樹高/地際径/葉・幹・根の湿重量)の測定、葉の形質(葉の厚み/葉面積)の測定

まずは切り倒す木を選定し、必要な項目を計測したら早速伐採にとりかかります。

伐採したら、その後は根っこを掘り起こしつつひたすら葉むしりを行います。地道な葉むしりと根っこを掘り起こすという体育会系の作業を、メンバーを交代しながらこなしていきます。



初日は葉むしりと根っこの掘り起こしの作業途中でタイムアップとなりました。慣れない作業からか、みなさんなかなか疲れた様子でした(自分も)。しっかり休んで明日も頑張りましょう。

2日目:根茎の掘り起こし、葉むしり、葉の形質(蒸散速度・クロロフィル濃度)の測定

2日目は昨日の作業の続きから再開です。根っこの掘り起こし作業を進めていくと、なんと4つの班が選定した木がクローンとして地下部で繋がっていました!



繋がっていた根茎の様子(番号付近に伐採した木の根元があります)

1本に見える木が地下でこんなにしっかりとつながっているとは驚きです!こんな姿が見られるとは学生たちの努力の甲斐があってです。自分も思わず何枚も写真を撮ってしまいました。

この後、根や幹、枝の重量を測って2日目は終了となりました。中には根の重量が50kgを超えた木もあり、2日目もなかなかハードな1日でした。

3日目:潜伏芽の観察、データの取りまとめ

3日目は切り倒した幹の樹皮をはがし、潜伏芽の観察を行いました。潜伏芽とは長年にわたって休眠状態にあるものをいい、通常は樹皮の下で待機しています。幹が切断されたりすると成長をはじめ、萌芽更新を行います。

最後に取得したデータをまとめて解散となりました。測定したデータも多く、レポートをまとめるのはなかなか大変かと思いますが、学生のみなさん頑張ってください!

本実習をTAとして参加させていただいて、2年前に実習生として参加していた頃を思い出し、懐かしい気持ちになりました。実習生の目は木本という自然の生命に真正面から触れ、輝いていたように感じました。今回はニセアカシアという1種のみでしたが、佐渡では多くの樹木に触れることができます。新型コロナウイルス蔓延が落ち着き、佐渡という多様性豊かなフィールドで実習ができる日が来ることを願うばかりです。

2022年9月29日木曜日

新潟農業・バイオ専門学校樹木学実習(7/26-29)

726日から29日まで、新潟農業・バイオ専門学校の樹木学実習がありました。

この実習では外部講師の明石さん(お山の森の木の学校)と連携し演習林の植生観察を行いました。

演習林での開催は約2年ぶりです。

まず初めにガイダンスを行い学生の自己紹介などを行いました。

23日目は演習林内部を散策しました。

実習中は渓畔林、人工林、大倉シラバ(半自然草原)、スギの天然林を散策しながらそれぞれの森林の特徴や森林を構成する主要な構成樹種について解説を行いました。

一部の樹種は枝を実際に触れながらその特徴を学んでいきました。

大倉シラバでノイバラのトゲが刺さった学生

大王杉を観察する学生

最後に演習林内で観察した植物に関する簡単なテストも行いました。

苦戦している学生もいましたが皆さん無事に合格できたみたいです。

千手杉の前で記念撮影

2022年9月28日水曜日

教育学部植物野外実習(7/22-24)

722日から24日まで、教育学部の植物野外実習(佐渡実習)がありました。

この実習では佐渡島内の主要な植物種を覚えるためキセン城や演習林などで植物サンプルの採集を行いました。

※サンプルする種は担当教員が指示しており希少種の採集は行っておりません。

初日は小佐渡のキセン城で広葉樹二次林を構成する樹種やビオトープの水草のサンプルを行いました。


2日目は演習林内の植物採集です。

演習林の林道沿いを散策しながら植物サンプルの採集を行いました。

あいにくの大雨でしたが皆さん一生懸命に作業を行っていました。


サンプルを仮押しする学生

悪天候でも元気な学生

宿舎に戻った後は採集したサンプルを新聞紙に挟んでいき標本の作製を行いました。

サンプル数が多いため夜遅くまで作業する学生も多くいました。

最終日(3日目)は二ツ亀周辺を散策しながら再び植物採集です。

疲れ気味の学生もいましたが作業は無事に終わりました。

2022年9月14日水曜日

【佐渡ゼミ】森林計画学会ハイブリッド夏期セミナーの募集

下記の日程で森林計画学会ハイブリッド夏期セミナー(佐渡ゼミ)を開催致します!

今回の佐渡ゼミは佐渡市内の朱鷺交流会館とオンライン形式のハイブリット開催となります。


森林計画学会ハイブリッド夏期セミナー

202292118:30〜(2時間程度)

セッション1:佐渡の森林と森林研究        

梶本卓也(新潟大佐渡自然共生科学センター演習林)

小柳正彦(新潟県佐渡地域振興局)

「佐渡島の森林、林業の概要及び佐渡演習林の紹介」

村上拓彦(新潟大農)

「トキの営巣適地モデルと演習林GIS


セッション2:バイオマス利用のための森林管理

當山啓介(東大千葉演)

「千葉県におけるNEDO事業:ユーカリ等のエネルギー林業の試行」

髙橋正義(森林総研)

「ヤナギを用いた木質バイオマス林業普及のための課題」


参加を希望される場合は下記のURLから申し込みをお願い致します。

https://forms.gle/7UdLbFQYnfLteHrZ6 (締め切り:9月20日) 

2022年9月4日日曜日

伊豆諸島・神津島と佐渡島でのツリガネニンジン調査

こんにちは。
佐渡研4年生のAです。
私はツリガネニンジンなどの訪花昆虫について研究を行っています。
今回はツリガネニンジンについて、7月下旬に行った伊豆諸島・神津島での調査と、8下旬に行った佐渡での調査について紹介させていただきます。

私は関東地方出身なのですが、伊豆諸島には行ったことがなく、ワクワクした気分で船に乗り込みました。
そして、汽船からはなんと、大きなクジラを間近に見ることができました!船の近くでクジラが姿を現すことはとても珍しいらしく、なんとも幸運な出会いに恵まれました。

汽船から撮影したクジラ

早速、伊豆諸島の大自然の歓迎を受けて、神津島に上陸しました。     

神津島では海岸のいたるところで、ツリガネニンジンが咲き誇っており、とても綺麗でした。

ハナバチ類が訪花するツリガネニンジン

私はツリガネニンジンにやって来る訪花昆虫の昼と夜での違いや、夜間の訪花昆虫の捕食者などを調査しました。昼間は主に、ハナバチやツチバチなどのハチの仲間が盛んに花へ訪れるのですが、夜では一変します。夜は静かで飛来する昆虫も減ってきて、花にはアリやカネタタキなどの徘徊性の昆虫が目立つようになりました。

そして、ふと花にライトを当てると、そこには大型のムカデやゲジが息を潜めて獲物を待っているのです。初めて目にしたときはゾッとしました。昼間には一切見かけることがなかった彼らは、夜になると静かに狩りへ出掛けるようです。始めは、夜間の調査は心細く、ムカデに噛まれないか不安でした。しかし、観察していくうちに、普段目にすることない夜間の生き物たちの暮らしを垣間見ることができて、面白くなりました。

タイムラプスカメラに映ったツリガネニンジンに登るムカデ

私の調査地は開けた海岸草地なので、静かな夜にそよ風を浴び、さざ波と虫の音を聴きながらの調査は気持ちがよかったです。空を見上げれば、満点の星空が広がっており、とても清々しい気持ちになりました。

伊豆諸島で撮影した天の川

9月にも伊豆諸島で調査をする予定なので、さらにツリガネニンジンと虫たちの関係の謎に迫れるよう頑張りたいと思います。
         
神津島・天上山



続いて、8月下旬には佐渡島でも調査を行いました。
佐渡島もツリガネニンジンが沢山咲いており、今回は大野亀で訪花昆虫の調査を行いました。     
夕暮れの大野亀とツリガネニンジン

こちらは神津島とは違って、昼も夜も様々な昆虫が花にやって来ていました。昼間の多い時間には、同時に3匹以上のハナバチが視界に入るほど盛んに飛来していました。他には鱗翅目もしばしばみられました。特に薄暮時でのガの飛来数は多く、神津島と比べてヤガ科の訪花が多く感じました。

そして、夜には彼らが姿を現します。昆虫に影響が無いよう、暗くして観察をしていたのですが、異変を感じてライトを付けると…(苦手な方はご注意ください)              

ツリガネニンジンへ来た蛾を捉えたゲジ

なんと、ゲジがツリガネニンジンに訪花したガの仲間を捕食していました。この光景を見てみたかったので思わず興奮してしまいました。

さらに、同じツリガネニンジンの株に大きなムカデも来ていました。

ツリガネニンジンで獲物を待つムカデ

朱色と紺色のコントラストが鮮やかなムカデで迫力がありました。夜の調査は面白いですね。

色々な場所で、ツリガネニンジンと訪花昆虫を観察してきて、地域によって様々な違いがあることに気づきました。特に島嶼では、それぞれ環境が大きく異なっていること、それによりツリガネニンジンの形態や、訪れる昆虫とその捕食者に違いが出てくるのではないかと感じています。これからも花と昆虫の関係をさらに調べて、面白い発見ができたらと思っています。

今回の調査で、先生方には大変お世話になりました。この場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございます。

長い記事となってしまいましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。

~おまけ~

調査で立ち寄った伊豆半島の岬にある公園では、ユウスゲが見頃でした。トビシマカンゾウとはまた違った良さがあり、落ち着いた檸檬色がとても綺麗でした。