2012年3月23日金曜日

コロラド川調査 3報

コロラド川本流から支流のバージン川に入り調査を続けました。上流域のザイオン国立公園内では河川沿いの植生は、Cottonwood(Populus)の林冠木にAsh(Fraxinus)、Maple(Acer)が混交していました。斜面上部に行くに従ってJuniper(Juniperus)、Pine(Pinus)に種が移り変わっていました。このPineはPinyon pineで一葉のマツです。これまではマツは2−5葉しか見ていなかったので感激しました。この辺りでは、中国原産の外来樹種のTamarixは見られませんでしたが、公園入り口あたりでは、小さな実生が砂州上にたくさん分布していました。母木は見られなかったことから、遠方から飛んできた可能性があります。下流に行くに従って、Tamarixの割合が多くなり、Cottonwoodとの混交林に変化して行きました。

宿泊したロッジ


バージン川の河畔林、典型的な山地河畔林

一葉マツ

河畔林内のサボテン、不思議な光景です

 バージン川の上流域景観

 バージン川下流の外来樹種侵入地、Cottonwoodと混交

全面に侵入したTamarixの群落

この調査の後はメンフィスに移動し、ミシシッピ川中流域のヌマスギの湿地林を観察してきました。これで今回の河畔林調査の報告を終わります。
典型的なヌマスギ林、ヌマミズキと混交


2012年3月9日金曜日

コロラド川河畔林調査 第2報

3月7日にラスベガスを出発し、8日までコロラド川本流の河畔林の植生を見て歩きました。まず、ネバダ州からアリゾナ州へと東に向かって車を走らせました。その途中は乾燥した砂漠で年降水量が100mm程度です。草本のパッチが広がっており、高木は存在しません。

砂漠の中にひときわ大きなサボテンの一種

その後、進路を北に取り、長年の河川の浸食によってコロラド高原が浸食されて形成されたグランドキャニオンに向かいました。その途中では、標高の上昇とともにPonderosa Pine、Pinyon Pine、Juniperの森林が現れ、ミュールジカも頻繁に見られるようになりました。標高2000m近くになると積雪が見られ、天候も悪化し雪が降り始めました。


渓谷の下にはPoplusやSalixで形成された河畔林がはっきりと見られました。河畔以外には高木はほとんど見られませんでした。



コロラド川支流には、中国原産のTamarisksが優占しており、在来種のPopulusやSalixは全く見られませんでした。
 コロラド川支流に分布を拡大したTamarisks

Tamarisksの調査

コロラド川本流にかかる橋梁

上流域では写真に白く見えるPopulusの分布が認められましたが外来種のTamarisksの侵入もかなり見られました。今回はフーバーダムの上流域でしたが、この上流にも大規模ダムが建設されており、これらのダムによる河川撹乱の動態が変化したために在来種が減少し、外来種の侵入が加速してきたと見られています。(ボス) 

2012年3月7日水曜日

コロラド川河畔林調査

3月5日からアメリカ、ネバダ州ラスベガスにコロラド川河畔林の調査に来ています。コロラド川というとアメリカ大恐慌対策として行なわれたニューディール政策で建設されたフーバーダムを思い起こします。今回、始めてこの地を訪れることができました。フーバーダムによってできたレイクミードの水と電源によって砂上の楼閣ともいうべきラスベガスが出現しました。このダム建設によってコロラド川流域の生態系は大きく変化したと言います。今回の調査の目的は、ダム建設による河川の撹乱体制の変化により、外来種の分布が大きく拡大したことを確かめることです。中国原産のタマリスクやロシア原産のロシアンオリーブの侵入が著しいとの報告がなされています。実際に、レスべガスwash(ラスベガスの都市排水がレイクミードに流れる河川)では大規模な自然再生が行なわれています。侵入したタマリスクを伐採し在来樹種の植栽が行なわれていました。これらの自然再生もラスベガスという観光都市の収入によってまかなわれているのでしょうか。
今日は一日中、強風が吹いており、まさに砂漠の中の砂嵐という感じでした。非常に乾燥していて湿度も低く、常にのどが乾く状態でした。観光都市として栄えている観光都市ラスベガスも人工のオアシスによって支えられていることを実感しました。周辺の山々も砂埃で全く見えなくなり、花粉症のように目も痛くなり、口の中もじゃりじゃりという感じでした。このような埃の中ではせっかく持ってきたデジカメもいつまで持つかわからない状態です。明日からは、コロラド川の本来の自然植生と、外来種に覆われてしまった生態系を調査する予定です(ボス)。

ラスベガスの夜景

ヤナギなどによるラスベガスWashの自然再生

メスキートなどの植栽

フーバーダム

フーバーダム(レイクミード)