3/7(日)、2020年度の佐渡自然共生科学センターの3施設合同開催となるシンポジウムが開催され、136人(会場53人、オンライン83人)の方々にご聴講いただきました。
開会の挨拶では、臨海実験所の安東宏徳教授から「佐渡では大きな四季変化を観測できる」というお話があり、当センターが環境変動と生物への影響を研究して発信していく意義を再認識する導入から始まりました。
パネルトークでは、3施設からそれぞれ飯田碧准教授(海洋領域; 臨海実験所)、永田尚志教授(里山領域; 朱鷺・自然再生学研究施設)、本間航介准教授(森林領域; 演習林)が講演しました。
飯田准教授は海から河川まで幅広い種類の魚、永田教授は世界各地の鳥類の研究例を紹介しながら、これまでに生物が環境変動に対してどのような反応を示し、またこれからどのようなリスクが考えられるかといった問題提起を行いました。
成魚や成長はある程度多様な環境条件で生息できるとしても、繁殖や若年世代への影響は大きいというギャップが印象的でした。
本間准教授は、長期的なモニタリング研究の重要性とその難しさを交えながら、日本で体系的な長期大規模生態研究(JaLTER)が発足するまでの経緯などを紹介しました。
研究者個人の努力では調査規模に限界があるため、このような長期モニタリング調査のデータを共有できるシステムの重要性を再認識した方も多いのではないでしょうか。
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多様な魚類の例を紹介する飯田先生 |
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永田先生は鳥の卵の殻への影響などを話されていました |
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本間先生は「手法」に着目した内容です |
基調講演では、初代センター長で森林領域長でもある崎尾均教授が「気候変動と森林変化―桜と富士山―」と題して講演を行いました。
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いよいよ崎尾先生の基調講演です |
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スライドには若かりし日のボスの姿も |
ご講演は下記の4つのトピックで構成され、多角的に環境変動の影響を捉えることが出来る内容でした。
1.桜の開花の早期化
2.シオジ(渓畔林樹種)の開花周期の変動
3.富士山の森林限界の上昇
4.ニホンジカによる植生への影響
特に講演タイトルにも含まれる「富士山の森林限界」に関する研究は、なんと崎尾先生が卒業研究をされていた学生時代から継続40年(!)という超長期的な現地調査の賜物です。
この長期調査により、富士山の森林限界ではカラマツが特異的な形態を示したり、森林限界の位置そのものが上昇して森林化が進行しているという貴重なデータをご紹介されました。
個人の研究でこれほど地道なデータを積み重ねられてきたことに驚きと敬意を感じるとともに、その結果も非常に面白いものでした。
箕口先生が閉会のあいさつで「雨垂れ石をも穿つ」と形容されていましたが、まさにその象徴のような成果ですね。
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来年度は当センターのフェローを務められる予定です |
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最後は会場からの拍手で感謝の意を示しました |
今回のシンポジウムは会場参加+オンライン参加の両立という初めての形式での開催となりました。
途中接続に手間取る場面もありましたが、オンラインで遠方から参加された皆様もご満足いただだけましたら幸いです。
崎尾先生はこの3月末で退職されるため、直接お話を聞くことができる貴重な機会となりました。
佐渡研究室の卒業生の方々も多数聴講されていたようです。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。