2020年4月29日水曜日

続報!ツバキキンカクチャワンタケ

先日、採取した子実体(キノコ)から菌の分離を試みていましたが…

開始から5日後、寒天培地上に菌糸が伸びていました!
無事に他の種類の菌の混入もないようなので、ツバキンカクチャワンタケの株とみてよいでしょう。
表面を薬剤で殺菌したキノコ片から同心円状に伸びる白い菌糸
…と曖昧な言い方なのは、菌糸の状態では特徴がほとんどないので、今の段階ではまだ「確実にこの菌です」とは言い切れないのです。

肉眼には見えない「菌の世界」では、他の菌がなりすまして(いるという自覚はないでしょうが)ぬくぬくと培地の栄養で育っていても見抜くことは難しいのですね。
よっぽど特徴的な色や形をしていたり、培地の上で胞子を作ったりしていれば、別人だとわかることもありますが。
顕微鏡で観察しても、特徴がない!
もしかすると、これらの写真を見て「これがキノコ?ただのカビじゃない?」と思う方もいるかもしれません。
そう、キノコもカビなんです。
キノコというのは植物の花や果実にあたる一時的な姿(繁殖器官)で、普段はカビ(菌糸)として生活しているのです。
スーパーに並ぶシイタケもマイタケも、にょきにょきと伸びてくる前は皆、カビ生活を経験してきたんですね。
カビとキノコは紙一重なんですよ。

他の人の研究では、ツバキキンカクチャワンタケの菌株は培地上で菌核(前回紹介した黒いかたまり)を作ることもあるようです。
このまま培養を続けて、その様な特徴も観察出来ると面白いですね。
最終的には、DNAを調べて「確実にこの菌です」と確認することになります。

こちらはシャーレの蓋の裏にキノコ片を逆さに貼り付け、落下した胞子から菌糸が伸び始めている様子
顕微鏡で拡大すると、散らばった多量の胞子からそれぞれ菌糸が伸びていることがわかります
卵形の胞子が発芽して、今まさに菌糸が出始めているところ
この小さな小さな胞子1粒(およそ10μm=1/100 mm)からの分離も試みているので、またまた無事に育ってくれますように。

2020年4月28日火曜日

甲虫学会から離島への渡島自粛の要請

新型コロナウイルス感染拡大防止のための長距離移動を伴う調査研究や採集、観察活動、特に離島への渡島自粛の要請が甲虫学会から出ています。
http://kochugakkai.sakura.ne.jp/committee/committee.html…
なお、海に隔てられた離島は生き物にとって「長距離」です

以下に一部引用します。
...大変残念なことに、不要不急の外出の自粛が叫ばれていた中で、3月下旬の春休み期間に多数の昆虫愛好家が訪れた八重山地方などでは、すでに地元住民から厳しい目が向けられている。にもかかわらず、現在もSNS上では、「ライバルが少ない今年が〇〇島採集の狙い目」、「ゴールデンウィークの採集でも今年の××島は安上がり」といった不謹慎な書き込みが少なからず見られることは誠に遺憾である。
 言うまでもなく、コミュニティが狭く医療体制が著しく脆弱な上に高齢者も多い離島では、新型コロナウイルスの侵入によって瞬時に爆発的感染が引き起こされ、高齢者の重篤化や医療の崩壊だけでなく、予想を遥かに超えた速度で自治体のあらゆる機能が停止し住民の生活が完全に破綻する状況に陥ってしまう可能性が極めて高い。...

2020年4月26日日曜日

実習動画のup!_早春の花

実習動画作成しました!you tubeにアップしています。

今は簡単に作成できるソフトが多いですが、時間はかかりますね。Go proで撮影しています。近づきすぎない(ピントが合わない)、ゆっくり動かす、編集でどうにでもなるけれど、なるべくワンカットで写したい。など色々課題が分かりました。

ピントが合わずブレブレですが、動画なのでなんとか見られるものになっているかと…
↓こちらはおまけで作成した佐渡の花です。
基礎農林2020 早春の花 on the Sado Island
https://www.youtube.com/watch?v=JcYk3FF9DBU&feature=youtu.be

2020年4月23日木曜日

ツバキキンカクチャワンタケ(椿菌核茶碗茸)というキノコ

昨日の記事で少し触れられていた、ツバキキンカクチャワンタケについてご紹介します。

ツバキ属植物の花に感染して病気を生じ、落花の一部から薄茶色の小さなお茶碗型のキノコを作る菌類です。
シイタケやナメコなどの食用キノコとは形もかなり違いますが、分類上も遠く離れたグループです。
毒は確認されていませんが食べるのに適するものではありませんので、観察して楽しみましょう。
3月末、新潟市内の大学構内のヤブツバキに発生したツバキキンカクチャワンタケ
 しかし、感染した落花からキノコとして目に見える形になるのは、なんと一年後(それ以上のことも)。
キノコを作るまでの間は、菌核と呼ばれる黒く堅い組織を作り、土中でじっと耐えているのです。
こうして出てきたキノコも、私たちが目にすることが出来るのは数週間程度です。
…まるでセミのような生き方ですね。
佐渡では約1ヶ月遅く、満開の山桜と一緒に観察できます
地面の中から掘り出すと長い柄がついており、柄の基部にある黒いかたまりが菌核です

「菌が病気を起こすメカニズム」や「病気を防ぐための方法」については調べられてきましたが、「そもそも野生状態でどのように生きているのか」については、意外とわかっていないことも多いようです。
さらに、ヤブツバキの花からの発生は多く報告されていますが、ユキツバキに関する情報は確認出来ていません。

ツバキの花の美しさを楽しみたい方にとっては、花びらを汚す病原菌として嫌われがちな菌類ですが、この菌が存在することにもきっと意味があるはず…。

これから数年をかけてこの菌を野外で観察し、室内で実験を行い、生き様をじっくり追っていきたいと思います!

まずは生きた菌株が欲しい…ということで、無事に分離できますように

2020年4月22日水曜日

小佐渡でユキツバキ

小佐渡でユキツバキとツバキキンカクチャワンタケ調査。咲き始めは早かったユキツバキですが、満開までは時間がかかっているようです。個体によりますが、山の上では7割程度の開花でしょうか。
まずはユキツバキ群落の眺めです。

続きまして、ユキツバキの下にもぐって撮影。雪に押されて枝が横に横に這うようにして成長しています。
小佐渡はコチャルメルソウも群生していました。
花の構造上、群生しすぎると絡まるようです(笑)
花拡大
 ウスバサイシンも群生していました。
ウスバサイシンもモリモリ
こちらはひとつの茎から3つも花径と葉が出てしまった
混合エンレイソウ
今週の唯一の晴れ間になりそうな隙の撮影です。カタクリが全然ありませんでした。雪の少なさで、やられてしまったのでしょうか?オオマルハナバチの女王もまだ見ていません。(コマルハナバチの女王のみです)

少雪の影響を受けていそうなもの→カタクリ、オオマルハナバチ?
いまのところ関係なさそうなもの(花期の速さを除く)→オオミスミソウ、エンレイソウ、フクジュソウ、アマドコロ、コマルハナバチ
むしろモリモリ?→コチャルメルソウ



2020年4月21日火曜日

佐渡島は昆虫もすごいぜ!

おうちにいてもフリーで楽しんで学べる動画、増えていますね。カマキリ先生も春の授業をしていました。ぜひ、大判小判サドマイマイカブリざっくざくの佐渡島に来ていただきたいですね。

4時間目はクマバチの回でした。個人的に好きなので、ブログにもよく登場しています。オスの顔は目が丸くて、目と目の間は黄色だそうです。今年は実際に採取して観察してみましょう。
トベラに来ているキムネクマバチ
2014年6月3日撮影
ナヨクサフジに来ているクマバチ
2019年6月2日撮影
サドマイマイカブリも毎年ブログに登場しています。
サドマイマイカブリがカタツムリかぶり(2匹)
2015年5月末
先日の4月7日のツチハンミョウ
このツチハンミョウもいつかはカマキリ先生が取り上げるような面白い生態です。「ハンミョウ」の回はありましたが、ハンミョウとはツチハンミョウ科です。
今年は(も?)昆虫もキノコもせっせと紹介しようと思います。
佐渡島は昆虫すごいんだぜ!?

2020年4月20日月曜日

教員会議

3月末の教員会議。外でソーシャルディスタンシング(フィジカルディスタンシング?)会議。この時期になったので、出来る会議ですね。とはいえ、現在は自宅勤務です。オンライン会議に慣れないとですね。

2020年4月19日日曜日

来島自粛のお願い…

佐渡島を含む離島は医師や病床の数が限られています。高齢化も進んでいます。海に隔てられているため患者の移送も大変です。美しい花の季節に入っていますが、コロナウイルス予防のため、来島をお控えください。その代わり、季節の写真をいっぱいお届けします!

佐渡市のリンクも貼っておきます。
https://twitter.com/sadocity_PR/status/1251382974475415553

ホトケノザとヒメオドリコソウ(白花)

今日は身近な植物です。家の周りでも見られるシソ科のホトケノザとヒメオドリコソウ。よく見ると白花のヒメオドリコソウがありました。
左からホトケノザ、ヒメオドリコソウ、オドリコソウ(白)
よく見ると葉も茎もアントシアニン?ありませんね。
ビロードツリアブが訪花して蜜を吸っていました。佐渡ではしばらくするとオドリコソウ(佐渡では白花)が咲きます。

2020年4月17日金曜日

演習林の動画教材作成中!

緊急事態宣言の対象が全国に拡大されましたね。
大学も近いうちにさらに活動が制限されそうですが、3密にならない状況でこのブログも更新を続けられれば…と思います。
学生さんたちも、なかなか研究を始められずにもどかしそうです。


演習林では現在、早春の花~例年は5月頃に咲く花が入り混じり、色とりどりの様相です。
最近はこの様子を動画として集め、新潟大学農学部や共同利用の実習用教材として利用するための準備を進めています。
5月の連休明け以降に、講義や研究活動がぶじに開始されるのか心配な状況ではありますが、「この季節にしか出会えない自然」の状態はしっかり記録しておきたいと思います。

急斜面を這い上り
地べたに這いつくばり…
尾根付近では雪の中を進み、動画撮影を行いました!
ザゼンソウは雪の中でも咲き始めています
暖冬のため、標高の低い人工林では早くも雪が完全に溶けています
動画では演習林の天然杉や春の花々がたくさん紹介される予定ですので、お楽しみに
オシドリ夫婦はのんびり散歩中

また、動画撮影の合間には雪解け間際に現れるという粘菌「ルリホコリ」を探しました。
子実体の表面に青色の金属光沢を示す、可憐で綺麗な粘菌です。
せっかく雪国にいるのですから、ぜひお目にかかりたい。

…なかなか目ぼしい収穫がない中、エゾアジサイの茎の上に整列した1mm程度の奇妙な物体を発見!
少々不格好で黒ずんでいるため正確な分類群がわからないのですが、光の加減で一部は青みがかった光沢が観察されました。
(ピントがよく合っていなくてごめんなさい)
今後も、良い状態のものを観察するために探索を続けますので、乞うご期待です。
ルリホコリの仲間…でしょうか?
冬眠から目覚めたばかり、少し寝ぼけたようなカナヘビも日向ぼっこの最中

2020年4月15日水曜日

佐渡の春?植物2020_part 2

寒い日が続いているため、オオミスミソウ、まだ低地でも見られますよ。とはいえ、オオミスミソウばかりアップするのもなんなので、その他の春?植物です。ほとんど4月14日撮影。
大佐渡では少ない、トキワイカリソウ
佐渡では白ですが、新潟でも南に行くと紫のも。
マンサク
オオイワカガミも花茎が伸びています。
もう咲きそう
コシノカンアオイの斑入りと斑なし
金北山のふもとには多いですね。
演習林はほとんどウスバサイシンです。
ミヤマシキミも先始め
ニシキゴロモ
続いて、どちらも宇宙人系。
春だけど
ナツトウダイ
コチャルメルソウ
地味目の花たちが多かったですね。でも地味目ほど、形が面白いですね。

2020年4月14日火曜日

大佐渡スカイライン日中開通しました!上は樹氷(霧氷かな)

2020年4月13日、大佐渡スカイラインが「全面通行止」から「夜間全面通行止」へ変更されました。ということで今日14日、上まで行ってみました!
まずは白雲台からの国仲平野&妙見山です。
続きまして、スカイライン最標高地点あたり。樹氷(霧氷というのかも)がついています。美しい!
最後に、サドカケスです。合計5羽、見ることが出来ました。ここでは何か食べていた1羽が映っています。zoomで画像が悪いですが…
コレラタケ
秋に出てくるようなキノコが
今年は春にも出ているようです

2020年4月13日月曜日

テンが現れました!

漂着イノシシを見に行ったあと後、小佐渡の山へ散策に行ったところ・・・テン現る。
佐渡では外来種のテンですが、可愛いですね。本州ではなかなか見ることが出来ないですが、佐渡ではタヌキ以上によく見かけます。

見かける哺乳類 テン>タヌキ>ノウサギでしょうか。

↓動画では少し遠いので、写真でもご紹介。
体長15-20cmほど、小さいのでメスでしょうか

黒目がかわいいですね

飛び跳ねて逃げる後ろ姿…躍動感があります!

イノシシ漂着しました

先日小佐渡の海岸にイノシシが漂着したという一報を受けて急行しました!豚コレラ予防のために、石灰を撒かれた上で、埋められました。
画像は遠目で終わっていますので、ご安心ください。画像の最後に中央左あたりの茶色いのがそうです。
佐渡には現在イノシシは生息していないですが、遺跡で発掘されたという報告はあります。秋くらいに骨になったイノシシを掘り返して、骨の観察を行うワークショップを考えております。こうご期待!

2020年4月12日日曜日

動画作成はじめました

オンライン授業などに備え、動画でのコンテンツ作り。演習林はフィールドメインなのでGo proで動画撮影始めました。
センター長も手作りマスクで「感染予防に努めましょう!」

2020年4月7日火曜日

演習林の雪と生物

少雪の演習林稜線。大王杉のある王様の小径(出口)の看板がすでに顔を出しています。
王様の小径
風衝地はまったく雪がなく、
草原はモノクロの写真のような色合いでした。
稜線の林道の様子
こちらは王様の小径、入り口の看板
関越え
雪がなーい。
ぜんぜんなーい。
低地では卵嚢からすでに出ているクロサンショウウオも。
ツチハンミョウが
土から出ていた葉っぱの柔らかい部分だけ
つまみ食いしながら歩いていました。
花の上で、花蜜に寄ってきたハチに飛び乗り、ハチの巣まで連れていてもらい、ハチの卵に寄生して育つ、という、なんとも不思議な昆虫です。
顔を出しているヤマトグサ

こちらは昨年度の山開き(4/19)のようす。この年も雪は少なめでしたが、4月上旬現在で、それよりも雪がないですね。
http://sadoken.blogspot.com/2019/04/2019_23.html
「山開き」でブログを検索していただくと、これまでの早春の演習林の様子を見ることができますので、ぜひご覧ください!

2020年4月6日月曜日

前期期間(~8/12)の実習受け入れの中止のお知らせ(新型コロナウイルスへの対応)

新型コロナウイルスの感染拡大が進み、心配な状勢となって参りました。
佐渡ではまだ発症が確認されておりませんが、関東での急激な増加や新潟市内でも発生している現状、いつ海を渡ってきてもおかしくないと感じております。

新潟大学では、このような状況を踏まえ学内授業暦の前期期間(4/20~8/12)は、対面授業を実施しないことが決定されました。
学内講義はすべて、動画配信によるオンライン講義か、課題配布によって行われる予定です。

これを受け、演習林においても同期間の学内・学外共同利用のすべての実習受け入れを中止することになりました。
また、例年公募型実習として全国の大学院生を受け入れてきた「樹木生態学特論」も、今年度の募集は行いません。
関係機関の皆様や実習を楽しみにしていた学生の皆さんには多大なご迷惑をおかけしますが、数十人の学生が共同生活を送る実習では、3密(密閉/密集/密接)環境を避けることが難しいことをご理解ください。

上記期間以降の対応につきましては、今後の拡大の推移次第での判断となる見込みです。


ようやく晴れて暖かい日も増え、外に出ることが気持ちよくなってきた季節ですので、こちらとしても大変残念です。

今年度は実習が実施できない代わりに、佐渡の自然を感じられるように「写真」や「動画」を多用してリアルタイムに自然を紹介していきたいと思います。

外出を自粛されている方、家の周辺に自然環境が少ない方にも、佐渡の自然や生物の生きざまを通じて少しでも安らいでいただけましたら幸いです。


枯れ枝の隙間からオオミスミソウが懸命に花を咲かせていました
コシノカンアオイの花は、キノコのふりをして昆虫を寄せているそうですよ
これは正真正銘のキノコ、クロコップタケの仲間…これを真似ているのでしょうか?