開始から5日後、寒天培地上に菌糸が伸びていました!
無事に他の種類の菌の混入もないようなので、ツバキンカクチャワンタケの株とみてよいでしょう。
表面を薬剤で殺菌したキノコ片から同心円状に伸びる白い菌糸 |
肉眼には見えない「菌の世界」では、他の菌がなりすまして(いるという自覚はないでしょうが)ぬくぬくと培地の栄養で育っていても見抜くことは難しいのですね。
よっぽど特徴的な色や形をしていたり、培地の上で胞子を作ったりしていれば、別人だとわかることもありますが。
顕微鏡で観察しても、特徴がない! |
もしかすると、これらの写真を見て「これがキノコ?ただのカビじゃない?」と思う方もいるかもしれません。
そう、キノコもカビなんです。
キノコというのは植物の花や果実にあたる一時的な姿(繁殖器官)で、普段はカビ(菌糸)として生活しているのです。
スーパーに並ぶシイタケもマイタケも、にょきにょきと伸びてくる前は皆、カビ生活を経験してきたんですね。
カビとキノコは紙一重なんですよ。
他の人の研究では、ツバキキンカクチャワンタケの菌株は培地上で菌核(前回紹介した黒いかたまり)を作ることもあるようです。
このまま培養を続けて、その様な特徴も観察出来ると面白いですね。
最終的には、DNAを調べて「確実にこの菌です」と確認することになります。
こちらはシャーレの蓋の裏にキノコ片を逆さに貼り付け、落下した胞子から菌糸が伸び始めている様子 |
顕微鏡で拡大すると、散らばった多量の胞子からそれぞれ菌糸が伸びていることがわかります |
卵形の胞子が発芽して、今まさに菌糸が出始めているところ |
この小さな小さな胞子1粒(およそ10μm=1/100 mm)からの分離も試みているので、またまた無事に育ってくれますように。