2020年8月31日月曜日

シンテッポウユリ

 今日から育林実習が始まります!9月は実習が6回。例年だと他大学実習もあるのでもっと多いですが、助走なしの実習フルマラソン期間が始まるので、戦々恐々としています。

さて、今日はシンテッポウユリ。前回ナガミヒナゲシという外来種について書いたことがありますが、こちらも、気付かぬうちに身近で良く見られるようになった外来種です。タカサゴユリとテッポウユリの交雑でできた園芸品種で、佐渡でもあちこちで咲いています。

タカサゴユリ(Lilium formosanum)は台湾原産で、この時期に咲き、花筒に紫褐色の筋が入っていることが多いです。

テッポウユリ(L. longiflorum)は日本の琉球・奄美に自生する種ですが本州にも入ってきています。タカサゴユリのような褐色の筋がなく、小さめで、花期も夏前です。

そして、それらよりもよく見かけるのがシンテッポウユリ(L. formolongi)。花期はタカサゴユリと同じ今の時期ですが、花筒は白いです。みなさんのおうちの周りでも見かけるのではないでしょうか?

2020年8月30日日曜日

身近な植物で学ぶ繁殖戦略_佐渡はケツユクサばかりでした

 ツユクサは花の構造が面白く、山田孝之さんの出演するシュールな番組「植物に学ぶ生存戦略」でも、送粉者による授粉が十分でないときに自分で受粉する遅延自家受粉など、取り上げられていました。身近によく見かける花ですが、その青い花も、夏の暑さを忘れさせてくれますね!

なんか複雑な構造です
青い花弁だけでなく、
おしべとめしべとなんか黄色い花みたいなのが
左の黄色い花は退化した仮雄しべとのこと
右上はめしべ
右下はおしべです
主な送粉者であるハナアブなどは、仮雄しべや花粉の少ない上部にある雄しべに気をとられているうちに、腹部あたりにある花粉たっぷりの雄しべに花粉をくっつけられてしまいます。フフフ♪

これだけでも、面白い!

ところで、ツユクサにはツユクサCommelina communisとケツユクサC. communis f. cliataがあり、ツユクサのほうが倍数体のようです。ケツユクサには苞の外面に白い毛があります。交雑して種が出来ても、しいなになるそうです。

家の近所1キロほどの犬の散歩道で、角ごとにツユクサをとってみてみたところ…

右の3つはツユクサ?
左の10はケツユクサ
圧倒的にケツユクサばかりでした。
しかも、毛が無いように見えるのも
うっすらあるんですよね
ということで全部ケツユクサかもしれません
毛がわかりやすいのはこちら
苞を開いてみると2つの果実(花の跡が2つ)がありました
(中を見ると1つの果実に3つ程度の胚がありました)
苞の中には毛はありません

ツユクサは遅延自家受粉の例で有名ですが、先行自家受粉もするようで、「ツユクサとケツユクサの繁殖干渉下における先行自家受粉の進化」について、昨日とても興味深くセミナーを聞かせていただいていました。その調査ではツユクサのほうが多数派だったのですが、佐渡島ではケツユクサのほうが多いのかもしれません。先住効果でしょうか?ほかの場所でも調べてみようと思います。仮に、佐渡では繁殖干渉がなかったら、ケツユクサの自家受粉はどうなっているのでしょうか…?

栄養繁殖もします

種子散布はどのようにして行われるのか(海外だとハトという事例や、エライオソームがある種もあるそうです)も気になります。

続報:外海府の佐渡ステーションや演習林でもケツユクサでした。ツユクサがケツユクサの倍数体ならば、祖先的なケツユクサは佐渡に入ってきており、倍数体のツユクサは入っていないのかもしれません(人為的な影響の大きい国仲平野や小佐渡は入っているかもしれませんが)。クサギとシマクサギの関係を思い出します…

2020年8月29日土曜日

今年度初実習!大野亀

 今年度初めての実習は、臨海実験所主催の臨海実習Ⅰ/海洋フィールド生物学実習の最終日、大野亀見学でした。お昼のフェリーで帰着する前に演習林に寄って、簡単に島の自然環境の概要をお話しし、そのあと大野亀見学です。

久々の大野亀
とても蒸し暑かったです
ツリガネニンジンの花もそろそろ終わり
左上に黒いドロバチっぽいのが来ており、
花筒に頭を突っ込んでしました。
ツリガネニンジンの海岸型。ハマシャジンとも呼ばれます。葉っぱが厚く光沢がある、海岸の乾燥した厳しい環境に適応した形質になっています。
結局上まで登る学生たち
連日の海実習で疲れがたまっているようでしたが、帰る前に、登りたくなったのでしょう。
矢印のあたりに居ます
やはり、力は有り余っていますね(笑)次回は演習林の山にも来てくださいね。


2020年8月28日金曜日

佐渡演習林 公開林間実習2020のお知らせ

 お待たせしました、佐渡演習林の公開林間実習2020に関するお知らせです。


今年度は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、「佐渡島民限定」「日帰り形式」での開催となります。

また例年は夏休みに開催しておりましたが、今年は少し時期を遅らせて10月3日の開催となります。


他地域からの参加や宿泊形式での開催を希望されていた方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。

来年度以降はまた多くの皆様にご参加いただけるよう、早く感染状況が収まることを願うばかりです。


「公開林間実習2020」

日時:103() 9:00~15:00
※参加希望者多数の場合は、同内容で10月4日(日)にも開催する可能性があります

内容:天然スギ林のトレッキング、森林の昆虫観察、演習林の自然見学など

・昼食持参、自家用車または市営バスで直接演習林事務所までお越しください
・詳細や申込書は演習林HPからダウンロードしてください
(http://www.agr.niigata-u.ac.jp/fc/sado_html/kyoudouriyou.html
「教育関係共同利用について」のページ内、「令和2(2020)年度の公募型実習のご案内」)

応募締め切りは9月18日(金)必着です。
佐渡島民の皆様のお越しをお待ちしております!




2020年8月27日木曜日

またまた冬虫夏草、オサムシタケ

 ようやく夏らしい気温になりましたが、毎日暑くて大変ですね。


さて、小佐渡でユキツバキの葉内生菌調査を行っている4年生、H君のサンプリングに同行したところ…

道脇の木の根元に、落ち葉に紛れて白いとげとげが生えた黒い棒のようなものを発見。

左のヒメアオキの下です、わかるでしょうか

アップにするとこんな感じ


これは、図鑑で見たオサムシタケに間違いない!!

というわけで、サンプリングは学生さんに任せて、せっせと(慎重に)土堀を開始。

手伝わなくてごめんなさいね。


佐渡はオサムシ類が歩いているところを頻繁に目にします。

これはオサムシタケに出会えそうだと思っていたところ、ようやく念願かないました。


わくわくしながら掘り始めると、意外と深い…。

植物の根も絡まっており、菌本体を切ってしまわないように慎重に掘り進めます。


4~5cmほど堀ったところでようやく、土の中に光沢が見え始めました。

この光沢は、オサムシに間違いない!!


そして、全容がこちら↓


緑がかった光沢のアオオサムシ成虫から伸びる、オサムシタケという冬虫夏草です。

これは美しい!


幼虫から生えることもあるようですが、成虫の方がテンションは上がりますね。

この写真のような白いピンが生える形状は無性世代の子実体(シンネマ)で、ごくまれに有性世代を形成することがあるようです。


ちなみに、佐渡島のアオオサムシはサドアオオサムシ(Carabus insulicola sado)という固有亜種として扱われるようです。

寄生菌の方は全国的に共通しているのでしょうか?

…しかしこれは、サンプル集めがなかなか大変そうですね。


こちらは乾燥標本として保管し、学生実習や地域のイベントなどで紹介できるようにしたいと思います。


2020年8月23日日曜日

夏の目覚まし

 小さいのに大音量です。ミンミンゼミ。お腹は共鳴室という空気が入っていて、動画で見えている伸び縮みしている腹弁の開閉の調節で、鳴き声の調子を変えているそうです。

 ミンミンゼミ、鳴き声はよく聞きますが、姿が見えないことの多いミンミンゼミ。グリーンの姿はとても美しいですので、ぜひ探して、背面も見てください!ちなみに、粟島や飛島は全身グリーンのミカドミンミンが多いらしいですよ。

 鳴き声は、地域性があるようです。中国雲南省に行くと「ミーン」がほとんどなく、高音で早いミンミンミンミン…繰り返していました。日本国内でも地域で違いがあるそうです。佐渡のミンミンは佐渡弁なのかもしれないですね。

2020年8月21日金曜日

サンショウウオ故郷に帰る

 お世話になったクロサンショウウオが故郷の水たまりに帰っていきました。ありがとう!という気持ちを込めて、リリース中。

データは大切に解析するよ
仕事が終わったら、演習林内の散歩。風衝地は快晴で、ツリガネニンジンが満開でした。爽やかな夏の草原。
白いツリガネニンジン
水が湧き出るところにひっそりと生育するモウセンゴケは
開花シーズンです
8月31日写真追加です。M先生が花柱は青で、花筒は白のツリガネニンジンの写真を送ってくれました。佐渡の金北山の隣の妙見山です。
持って帰って育てたい欲が湧きますが、国定公園内。そうでなくてもむやみやたらに盗掘するのはやめましょうね。

2020年8月19日水曜日

いつでも絵になりますね

 今週から、学生が調査や実験で滞在しています。しっかり研究して、海で遊んだり釣りをしたり、スイカを食べたり。夏の終わりを満喫しているようです。

今日は夕日とひまわり。海は波もなく、白に近い水色で輝いていました。

2020年8月18日火曜日

イカ釣り漁船は昔からソーシャルディスタンス

 まあ、明るいので、そうですよね…。それにしても綺麗です。


2020年8月14日金曜日

お盆ですね!

この時期は満開のひまわりですね!今年は長雨のためか、ちょっと少なめ。それでも夕日と美しいコラボレーションです。立ち止まる車もちらほらありました。



海とひまわり
ペルセウス座流星群の季節です。なかなか写真でとらえるのは難しいです。流星なくとも、美しい星空です!もっと遅くなると天の川も見えてきます。

街中でもこんな感じ

お盆が終わると、学生の調査ラッシュ、そして、いよいよ実習が始まります。今年度初めての実習のレポートをご期待ください!

2020年8月7日金曜日

コイヌノエフデの成長記録

着実に、キノコネタの投稿が増えていますね。
個人的な「趣味のキノコブログ」になってしまわないように気を付けます。

それでも、今日もやっぱりキノコネタ。


今日ご紹介するのは、「コイヌノエフデ」というスッポンタケの仲間です。
(すみません、写真を撮るの忘れていました)

成長が早いキノコなので、いつかタイムラプスで成長記録を撮りたいと思っていたところにちょうど良い幼菌(卵)を見つけました。
4年生の学生Nくん、Hくんが絶妙な設定と時間で撮影を行ってくれたおかげで、念願のコマ撮り動画が撮れました!



始めは長径1cmほどの小さな白い卵型の菌ですが、短時間で中からスポンジ状の柄が伸びてきます。
5分間隔で60コマ=300分(5時間)の成長がこの4秒に収められています。
朝日と共に成長したようでした。

赤い部分には緑色の「グレバ」と呼ばれる粘液を着け、においでハエなどの昆虫を誘引して胞子を散布してもらいます。
花と同じようなシステムですね。

他のスッポンタケの仲間は悪臭を放つものが多いのですが、今回はほとんど無臭でした(図鑑には「木が焦げたようなにおい」と書かれています)。
キノコの種類によって、違うにおいで違う昆虫を誘っているのでしょうか…?


2020年8月4日火曜日

遭遇したらラッキー!レアきのこ「ミミブサタケ」

今回紹介するのは、こちらのキノコ。

地面から生える耳!

「ミミブサタケ(Wynnea gigantea)」というチャワンタケの仲間です。
日本全国で発生するようですが、稀にしか出会えないレアな存在です!
その希少さから、都道府県によっては準絶滅危惧種に指定されていることもあります。

なんと今回の菌類調査で、初めて出会うことができました。
おそらく佐渡島内では初の報告ではないでしょうか。

そばだてています

まるでウサギの耳が地面から伸びているかのような、不思議な形!
(H先生はロバの耳と言っていましたが)
想像していたよりも大きく、見つけたときは思わず叫んでいた…ような気もします。

耳の一部をかじる毛虫

数本の耳(状のきのこ)が、根本で束になって柄につながっています。
柄は地中深くまで伸び、菌核を形成しているようです。

食用には向きませんが、それ以上に希少な存在なので食べないでください!!
また来年、同じ場所で出会えるでしょうか…?

植物の種のような胞子

まさか実物に遭遇できるとは思っていなかったので、びっくりでした。
調査開始直後に大雨に振られて(晴れ予報だったのに…)テンションが落ち気味でしたが、見事に回復してくれましたね。


軽く刺激を与えると耳の内側(チャワン面)から勢いよく胞子を吹き出しますので、もし見つけたら優しく胞子をまく手伝いをしてあげましょう。

8/7追記:胞子を吹き出すところの動画を追加しました!
予想外の勢いです。



2020年8月3日月曜日

国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」が連日通過!

国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」が連日通過しているのが、佐渡からも良く見れます。
飛行機よりも早く、スーッと通過していきます。写真撮影に失敗したので、明日、また挑戦!
ちなみに明日は新潟は以下の時間のようです(多少前後している気がします)。
是非、夜空を眺めてみてください!

倉敷科学センターホームーページより
https://kurakagaku.jp/tokusyu/iss/iss.html#NIGATA
8 月 4 日
20 時 31 分ごろ西北西の低い空で見え始め, 20 時 34 分ごろ 南西の低い空( 21.8 °)でいちばん高くなり, 20 時 34 分ごろ南南西の低い空( 21.8 °) で地球の影に入り見えなくなる。

2020年8月1日土曜日

美しき蝶スミナガシ(墨流)

さて、東北調査に行ってきました。梅雨前線をうまくかいくぐり、連日曇りの調査日和。あ、車で移動で野外調査なので、ほぼ人と接触していません!

調査目的(植物)のもの以外でも、色々楽しめるのがフィールドのだいご味なので、それらをメインに紹介いたします。

まずは山形で見たスミナガシ。実はつぶれた獣糞にいろんなチョウが集まっており、へんなオオムラサキ(♀ってこんなだったっけな?)と思って写した写真が「スミナガシ」でした。オオムラサキ(♂)もいたのですが、写真ブレブレだったので、スミナガシのみです。
スミナガシ
羽のブルーもきれいですが、口吻の赤と目の青も鮮やか

続きまして、津軽半島のニホンザル。車のすぐ脇からこちらを観察していました。

本州と佐渡と共通する植物の形態変異を見比べるのも楽しいです。
こちらは山形の変哲もないクルマユリですが、
本州と佐渡では違うようで面白いです。
佐渡はクルマユリは花数が多く、花の斑が目立ちません。
輪生する葉も大きいです。

そういえば奥尻も佐渡島のようなタイプでした。島嶼型ですね。http://sadoken.blogspot.com/2020/07/blog-post_15.html

つづいて、青森の海岸沿い松林のキノコ(Mさんに触発されて、キノコ写真が増えました)。
キノコからキノコ(同種かな?別種かな?)

→「キノコからキノコの追記です。Mさんより、ヤグラタケという菌寄生菌でキノコ型になるのはこの種だけとのこと、クロハツやシロハツなどに寄生するそうです。結構すぐに劣化してしまうので、きれいな子実体だそう。ほかに調べてみたところ、学名Asterophoraはギリシャ語で「星を載せた」という意味を持つとありました」

その場所は、タマゴタケ天国でした。あらゆるところからこの可愛らしいキノコが顔を出していました。とても美味しいキノコとして知られています。
タマゴタケの成長
傘が開くとこんな感じ
今年は長雨のせいか、キノコ多いですね。ただ、植物探索ときのこ探索は両立しないので(使う目線が違います)、2頭を追わないよう、植物に集中しながら調査をすることを心掛けました(笑)

おまけ*というか、こちらが調査の目的だったのですが・・・
山形のマッスルユキツバキの葉
山形のユキツバキ
分かりにくいですが、側脈がしっかり盛り上がり
腹筋のようなマッスル感!
遺伝的には、とても純粋なユキツバキですが、なんか顔つきが違う(←形態が他と違ことを言っています)ユキツバキでした。ウワミズザクラの葉を想像するようなパットでした。そういえば、同属の茶(チャ)の葉っぱも、マッスルですね。