2019年6月24日月曜日

2019/6/17-20 新潟大学農学部_基礎農林学実習(前半:1-3班)

今回の実習は、新潟大学農学部の2年生が佐渡島内の多様な自然環境を見学し、森林タイプの違いやトキの野生復帰の現場を学習する内容です。
1泊2日で行われるため、1日目の昼に佐渡両津港に到着してすぐに演習林の山道を歩き回り、2日目の午前に里山環境の見学とビオトープでの生物観察、トキの森公園の見学、そして昼の船で新潟へ帰る…という弾丸ツアーになっています。
この内容を約30名ずつ6班に分かれて繰り返すため、3班ずつ前半と後半に分かれて行います。
実際には、前半が17日(1班:演習林)→18日(1班:里山、2班:演習林)→19日(2班:里山、3班:演習林)→20日(3班:里山)と4日間連続の実習のようなものですね。

今回は、前半の1-3班の様子をお届けします!
(後半4-6班は7/1-4に行う予定です)
…ただ実習内容は同じため、各班の様子をまとめてご紹介しますね。

【1日目】
正午に両津港に集合し、そのまま黒姫集落から演習林に入ります。
港に到着して一息つく間もなく実習スタートです。

はじめは千手杉からスタート。
千手観音の腕のように伸びる天然スギの枝ぶりと、尾根沿いでありながら長期的に残る池と湿地を観察することができます。
どちらも佐渡演習林ならではの姿です。
1班は少し肌寒さを感じる森の中
2班は唯一演習林で天気に恵まれました!
3班は千手杉周辺を散策しました
霧の中の天然スギは存在感がありますね
続いてご一行が降り立ったのは、演習林内でも特に強い風が吹き抜ける風衝地(ふうしょうち)。
強風のため植物が大きく育つことができない地形は、実際に降り立つと目もくらむような崖になっています。
1班と3班は霧でまったく見えなかったけれど…
実はこんな断崖絶壁にいたんですよ!(2班の様子)
周辺には食虫植物のモウセンゴケもいるんです
1・2班はこの後、演習林のシンボルでもある大王杉と王様の小径(こみち)トレッキングしました。
残念ながら大雨に当たってしまった3班は、トレッキングが難しいと判断して千手杉と金剛杉周辺の短時間散策ルートに変更しました。
古いスギの枯死大木の上には、新たな若いスギや他の樹木が育っています
スギの葉の先には水滴がトラップされ、林内雨として降り注ぎます
3班は深い霧の中、金剛杉を見学
演習林内での実習のラストは、人工林です。
これまで見てきた天然スギの林と何が違うのか、学生たちはじっくり考えこんでいました。
実際に見て感じたことを、頑張ってレポートにまとめてくださいね!
技官さんが作ってくれたお立ち台から、学生に質問する崎尾先生
本間先生はなぜか2段目から
長い1日は、夜まで続きます。
夕飯の後は佐渡の自然に関する講義と、翌日の里山実習に向けてトキの野生復帰に関する講義がありました。
佐渡の自然の豊かさが伝わったでしょうか
明日も盛りだくさん…疲れてるけど頑張れー
【2日目】
翌日は朝から国仲平野に移動し、まずは里山の二次林見学とビオトープ調査からスタートです。
NPO活動でトキが暮らす里山環境づくりに協力してくださっている方のお宅で、トキが餌を採りねぐらとして利用する里山環境を実際に見て回りました。
とりあえず見える範囲はすべて個人の敷地という広さ!!
こうした個人の方の努力に支えられて、トキも安心して暮らせるようになっているのですね。

2班は大雨のため捕獲調査ができなかったので、トキがねぐらにする林まで歩いて観察に行きました。
雨でトキ観察も難しいと思われましたが、運よく3羽の野生トキが飛び立つ場面に遭遇!
これはこれで、他の班の人とは違うものを見れたのでラッキーかな?
きれいな里山風景が敷地の一部だなんて、驚きです
網を使った生き物の取り方をレクチャーします
さあ何が捕れたかな
水路でも調査します
雨の2班は少しでも観察しようと覗き込みます
この後学生たちはトキの森公園に移動し、施設見学をしてから両津港で解散です。
トキの森公園には、世界中のトキの仲間も飼育されています
港で解散、お疲れさま!
今回、1班は「強い低気圧通過後の荒波で大揺れのフェリー」、2班は「深夜の強い地震と翌日の大雨」、3班は「地震翌日の不安と大雨の演習林」と、それぞれに困難が伴う状況でしたね。
それでもめげずに実習を乗り切った皆さん、お疲れさまでした!
今度はぜひ、天候も良く安心できる状況で佐渡を満喫してくださいね。

【おまけ】
1班のビオトープ観察中、おたまじゃくしからカエルに変わる途中の子(おそらくモリアオガエル)を見つけました。
まだしっぽは残っていますが、ほとんどカエル。
体内の機能はもう陸上に適応しているので、バットの端につかまって落ち着いているところらしいですよ。
学生は「かえるじゃくし」なんて呼んでいました

2019年6月22日土曜日

6/18 山形県沖地震について

2019/6/18 22時過ぎに発生した地震に関して、日頃お世話になっている他大学の先生方等、多くの方々からご心配とお見舞いのご連絡をいただきました。
心より感謝申し上げます。

地震発生時、当演習林では学内実習中で、新潟大農学部の学生33名、宿直中の演習林教員1名、佐渡研究室の学生1名が宿泊中でした。
幸い全員怪我もなく、無事に過ごすことができました。
学生達も不安だったでしょうが、混乱もなく指示に従い冷静に行動してくれました。
またライフラインにも影響はなく、生活面でも不自由は生じておりません。

しかし当演習林を訪問されたことがある皆様はご存知の通り、宿舎は海の目の前、海抜2-3m程度の場所に位置しています。
今回の地震により、夜間暗い中での避難対応や避難ルートの再検討など、今後の対策への課題も見えてきました。
島という環境、それも中心部から遠く離れた沿岸集落という立地で、様々な状況を想定して備えておく必要があると痛感致しました。
今後も安心してご利用いただけますように、スタッフ一同で早急に対策を話し合っているところです。

最後に、ご心配頂きました皆様に重ねて感謝申し上げます。


2019年6月12日水曜日

流域環境プログラムとフィールド人材プログラム紹介イベント

昨日6月11日は、これから農学部や理学部でプログラム選択をしたり、研究室選びをする学生さんを対象に、ポスターや調査道具などを並べて、各プログラムや研究室の紹介を行いました。
佐渡研究室の学生さんがどのような研究をしているのか
ポスターを使って紹介しています。
佐渡から出張した
クロサンショウウオ幼生で
表現型可塑性を説明
佐渡演習林は佐渡自然共生科学センターになったこともあり、ポスターを新しくしました!学生さんの研究内容はこちら
→http://www.agr.niigata-u.ac.jp/fc/sado_html/sadoken_member.html



今年度は4年生9名、修士1年3名、修士2年2名、博士課程1名の計15名の学生が佐渡研究室で研究に邁進しています!佐渡島のフィールドの素晴らしさも、訪問してくれた学生さんを惹きつけたようです。皆さんも佐渡の森里海をめいっぱい使って、研究をしてみませんか?お待ちしております!
佐渡研究室に興味がある方はこちらまでご連絡ください。事務経由で教員に連絡が行きます。
→sadoken2011@gmail.com

2019年6月11日火曜日

2019/6/3-6 東京大学大学院_フィールド科学総論 佐渡島実習

3つ目の実習は、東京大学の生圏システム学専攻に所属する院生の皆さんがいらっしゃいました!
教員3名、学生18名と、大学院の実習ではなかなか大所帯ですね。
実習自体も、河川での水生昆虫調査から田んぼでの農作業、トキ関連施設の見学と3泊4日でボリュームのある内容です。


【1日目】
実習初日は、まず夕食後の佐渡島の自然に関する講義からスタートです。
学生からは「演習林内にそれほど多様な自然環境があるなんて驚き、とても面白い内容だった」という声も聞かれました。
また、翌日から行われる水生昆虫調査の予習として、東大の藤田先生からも特に注目する分類群や環境条件との関係等の講義が行われました。
佐渡島の自然に興味を持つ学生たち
明日の河川調査ではどんな成果が得られるでしょうか
【2日目】
いよいよ野外で実習スタート!
まずは、前週の東邦大と同じ河川の下流域で物理環境の測定と水生昆虫採取を行います。
川幅を測定中
すぐ後ろは青い海!
石に貼りつくニンギョウトビケラの巣。穴が開いているのは旅立った後ですね
どれが生物かわかるかな
午後は上流域での調査です。
天気が悪くても良すぎても大変なのがフィールド調査ですが、涼しい林内なら安心ですね。
お弁当も食べて、さあもう一仕事!
こつこつと昆虫を拾い集めます
カワゲラの成虫も散歩中
先生方も個人的に観察しています(なぜか右足は裸足…?)
寄せ木細工のようにきれいなカクツツトビケラの巣
この日は長い一日…
朝から野外で調査を続けた後、施設に戻ってからも観察・同定作業が続きます。
見慣れない生物に苦戦しながらも、皆一生懸命に顕微鏡を覗き込みます。
疲れも感じさせず、黙々と観察中
【3日目】
皆さんの努力の甲斐もあり、予定より早くデータまとめが終わりました!
そのため当初予定していた観察の続きから、大野亀~二ツ亀経由で散策した後にトキ交流会館へと向かうコースに変更です。
お天気も良く、せっかくなので佐渡のフィールドに出られて良かったですね
トビシマカンゾウもちょうど満開、ラッキー!
アサツキというネギの仲間、野菜のそれです
賽の河原を経由する散策路
これはヒョウタンボク(キンギンボク)、赤い実はかわいいけれど有毒なので注意
イワユリ(スカシユリ)も満開でお出迎え
二ツ亀の名のとおり、亀の甲のような岩がふたつ
風が抜ける木の下でお昼ご飯もおいしいですね
私が同行したのはここまでですが、午後はトキ交流会館の周辺にある自然農法の水田で除草作業を体験したそうです。
夜には近隣の農家さんからお話を聞きながら懇親会を行ったとのことで、楽しく過ごしていただけたようです。

【4日目】
最終日も同行はしておりませんが、水田見学やトキ順化施設の見学等を行い、佐渡島の人と自然の共生について学ばれたそうです。
翌7日には20回目のトキの放鳥が行われたため、放鳥直前のトキにも会えたのかもしれません。

東大の皆さん、盛りだくさんの実習お疲れさまでした!
この実習では残念ながら演習林内には立ち寄らなかったので、ぜひまたの機会にお越しくださいね。


【おまけ】
二ツ亀でおもしろい昆虫を見かけました。
ぱっと見はマルハナバチのような毛むくじゃらの姿。
オオイシアブという他の昆虫を捕食するタイプのアブだそうで、人間は襲わないので怖がらないでくださいね。
ごついけど愛嬌がある顔してます

2019年6月5日水曜日

2019/5/27-31 東邦大学_野外生態学実習II

今年度2週目の実習として、千葉県から東邦大学理学部の3年生達が佐渡にやってきました。
実は、私まつくらの母校でもある東邦大。
学科は違いますが、長谷川先生には学生時代からお世話になっておりました。
東邦大生物学科には、生き物好き・野外観察好きの学生が多いのです。

【1日目】
演習林に到着したのは夕方。
なので、本格的な活動は翌日から…と思いきや、東邦大は違います。
皆さん長旅の疲れも感じさせず、夜の観察会に出かけました。
夜行性の昆虫を探しながら歩き回っていると、ヘビを見つけたとの報告が。
長谷川先生(注:ヘビ大好き)がかけつけると、シロマダラというヘビでした!
夜行性で滅多に姿を見ることがないため、幻のヘビとも呼ばれているんですよ。
(私も個人的にずっと見たいと思っていたので念願のご対面でした)
なんと、道路の真ん中にシロマダラの子供がいました(かわいい)
先生は嬉嬉として路上に寝そべり、学生達も群がります
【2日目】
今回の実習は、佐渡の河川での水生昆虫調査がメインとなります。
室内で調査方法の講習を行ってから川の下流域で調査し、午後からは雨予報のため室内で観察・同定作業となりました。
カゲロウ・カワゲラ・トビケラ等の幼虫がたくさん捕れ、これらを検索表にしたがって分類していきます。
調査と同定は、佐渡自然共生科学センター/海洋領域・里山領域の先生方にもご協力いただきました。
私たち演習林(森林領域)には昆虫や魚類の専門家がいないため、とても心強いです!
室内で先生達からレクチャーを受けてから
いざ、川へ!胴長で動きづらいけど頑張れー
ハゼの仲間の卵(むしろ稚魚)も発見!
35cm四方の範囲で取った川底の石から、水生昆虫を拾い出します
室内作業では、先生もトビケラの巣の解体に挑戦です
これはアミカという昆虫の幼虫です。宇宙人みたい
【3日目】
雨も上がり、同じ川の上流域で調査を行ったあとに川沿いを下りながら下流域まで歩きます。
昨日行った水生昆虫の調査に加え、魚類採集・両生は虫類(トカゲ/カエル類)とバッタのセンサス・草本植物の被食率調査と盛りだくさんの一日でした。
下流と違い、上流は川幅が狭く流れが速いです
サルメンエビネというランの仲間もちょうど見頃
ミズベノニセズキンタケの仲間
カエルはいるかな
上流からの移動途中、先生はシマヘビを捕まえてご満悦
シマウキゴリ・ルリヨシノボリなど、ハゼの仲間が多く捕れました!
【4日目】
調査としては最終日。
午前中は近くの別の川の下流域で、昆虫以外(魚・両生は虫類・バッタ・草本)の調査を行いました。
午後からは魚の解剖を行い、胃内容から食べている昆虫等を調べます。
アユカケというカジカの仲間の魚(かわいい)
ホオジロも調査を見守ります
ぬるぬるして、解剖するのが難しいよー
夜はバーベキュー!佐渡ならではの、海鮮多めのラインナップです。
火起こしは任せろと言わんばかりのすばらしい扇ぎです
こんなに豪華でいいんですか!
佐渡研学生が調査のために捕獲したイワナも並びました
【5日目】
最終日は、盛りだくさんの実習内容から各班が興味を持ったテーマで仮説を立て、データと共に発表しました。
みなさんいい発表でしたよ
実習に参加された皆さん、5日間お疲れさまでした!!
ぜひまた佐渡に遊びに来てくださいね!


【おまけ】
今回の川虫調査では、シロカゲロウというとても珍しい昆虫の幼虫も記録されました!
佐渡では初報告、全国でも稀にしか見られないらしいですよ。
東邦大のみなさん、お手柄です!!
こちらは今後、正式に論文で報告される見込みとのことです。
ご期待下さい。
特徴的なあごとつぶらな瞳がかわいい(かもしれない)